問195(病態・薬物治療)
55歳男性。会社員。26歳時に結婚し、子供が二人いる。
元来まじめな性格で、会社では昼夜を問わず仕事をしていた。
2年前に昇進し、一層仕事に励んでいた。
今年に入り、朝早く目が覚めてその後眠れないようになった。
また、便秘がちになり食欲が低下したため、近医の消化器内科を受診したが軽快しなかった。
その後も体調不良が続き、これらの症状に加え、立ちくらみや耳鳴りが出現したため、内科を転々とし精査を受けたが、器質的異常は認められなかった。
やがて、一日中身体の不調を自覚するようになり、業務中にミスが増えた。
「こんなダメな自分と一緒にいても未来がないので離婚しよう。」と、妻に頻回に言うようになった。
趣味のゴルフへの興味もなくなり、休日は家でぼんやり過ごすようになったため、心配した妻と一緒に精神科を受診し、うつ病と診断された。
この患者の病態と治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.微小妄想が認められる。
2.昏迷が生じている。
3.記憶障害を伴う可能性が高い。
4.治療では、十分な休養が推奨される。
5.薬物療法では、初回から2剤以上の抗うつ薬を併用する。
問195の解説
1.「〇」微小妄想とは、自分の価値を実際より低く評価してしまい、自分には存在価値が無いと思ってしまうことです。設問の「こんなダメな自分と一緒にいても未来がないので離婚しよう。」より、微小妄想が認められます。
2.「×」昏迷とは、意識障害の1種で、反応に乏しく、刺激により覚醒する状態です。
(※昏睡は、刺激しても眼を閉じて、覚醒できない状態です。)
設問より、昏迷とはいえないです。
3.「×」うつ病も、認知症に似た記憶障害をおこすことがありますが、うつ病の記憶障害は、患者さんが記憶障害を自覚していることが、認知症と違います。
また、うつ病による記憶障害であれば、最近の重大な出来事などを忘れることは稀で、記憶障害を伴う可能性もそれほど、高くないです。
4.「〇」うつ病の治療では、十分な休養が推奨されています。
5.「×」初回の抗うつ薬は、単剤投与が基本です。
問195の解答:1と4