問262-263
13歳女児。身長150cm、体重42kg。昨夜から38.5℃の発熱があり、今朝になっても熱が下がらず、筋肉痛、頭痛、倦怠感を訴えたため、午前中に近医を受診した。インフルエンザと診断され、母親が処方箋(処方1及び2)を持って来局した。薬剤師が薬歴を確認したところ、バロキサビル マルボキシル錠による発疹の副作用歴があったので、薬剤師から処方医へ連絡し、処方1が処方3へ変更となった。
(処方1)
バロキサビル マルボキシル錠20mg 1回2錠(1日2錠)
1日1回 夕食後 1日分
(処方2)
アセトアミノフェン錠200mg 1回2錠
発熱時 5回分(10錠)
(処方3)
オセルタミビルカプセル75mg 1回1カプセル(1日2カプセル)
1日2回 朝夕食後 5日分
問262(薬理)
処方1及び3のいずれかの抗インフルエンザ薬の作用機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.RNA依存性RNAポリメラーゼを阻害することで、ウイルスRNAの複製を阻害する。
2.キャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を阻害することで、ウイルスmRNAの合成を阻害する。
3.ウイルスに結合してエンベロープの融合・脱殻を阻害することで、ウイルスRNAの宿主細胞への輸送を妨げる。
4.ノイラミニダーゼを阻害することで、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を抑制する。
5.RNA依存性DNAポリメラーゼを阻害することで、ウイルスRNAからDNAへの逆転写を阻害する。
問262の解説
バロキサビル(ゾフルーザ®):エンドヌクレアーゼ阻害薬
バロキサビルは、インフルエンザウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を阻害し、ウイルスmRNAの合成を阻害することにより、ウイルス増殖抑制作用を示す。
オセルタミビル(タミフル®):ノイラミニダーゼ阻害薬
オセルタミビルは、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを阻害し、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を阻害することにより、ウイルスの増殖を抑制する。
1.「×」ファビピラビル(アビガン®)に関する記述です。
2.「〇」バロキサビル(ゾフルーザ®)に関する記述です。
3.「×」アマンタジン(シンメトレル®)に関する記述です。
4.「〇」オセルタミビル(タミフル®)に関する記述です。
5.「×」逆転写酵素阻害薬に関する記述です。
※インフルエンザウイルスは、RNAウイルス(RNAウイルスは変異が多い)
問262の解答:2と4
問263(実務)
薬剤師が母親に伝える内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.平熱に戻った場合は、処方3の使用を中止してください。
2.解熱した翌日より学校に登校できます。
3.発熱時には、カフェインを多く含むお茶やコーヒーを摂るようにしてください。
4.処方3は、本日中に服用を開始してください。
5.異常行動による事故を防止するため、お子さんが一人にならないよう配慮してください。
1.「×」平熱に下がっても、痰などにインフルエンザウイルスの排出は続いていたり、インフルエンザウイルスの耐性化を防ぐためにも飲みきりましょう。
2.「×」学校保健安全法で、 インフルエンザの出席停止期間は、 「発症した後 5 日を経過し、かつ、解熱した後 2 日を経過するまで」と定められています。
3.「×」カフェインを多く含む飲料の摂取は、眠れなくなったり、利尿作用があるので脱水の可能性もあるため控えましょう。
4.「〇」オセルタミビル(タミフル®)は、インフルエンザウイルスが宿主細胞から遊離する前に服用した方がいい薬なので、インフルエンザ様症状の発現から遅くとも2日以内に服用を開始する。
5.「〇」インフルエンザに罹患したり、オセルタミビル(タミフル®)を服用した際に、異常行動が起こることがあるので、感染に気をつけ、患者を一人にしないよう配慮することは大切です。