問264-265
56歳男性。体重72kg。5カ月程前、職場の健康診断で便潜血陽性を指摘され大学病院を受診した。検査の結果、S状結腸がん(StageⅢ)と診断された。約1カ月後、S状結腸切除術が施行された。その後、術後補助化学療法として、FOLFOX療法(オキサリプラチン・レボホリナートカルシウム・フルオロウラシル)を入院にて導入することとなった。
問264(薬理)
FOLFOX療法に用いる薬物又はその活性代謝物のいずれかに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.チミジル酸合成酵素を阻害することで、DNAの合成を阻害する。
2.ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害することで、活性型葉酸を枯渇させる。
3.プロテアソームを活性化することで、腫瘍細胞の増殖抑制及びアポトーシス誘導を示す。
4.ジヒドロピリミジン脱水素酵素を活性化することで、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する。
5.フルオロデオキシウリジン一リン酸(FdUMP)及びチミジル酸合成酵素と複合体を形成することで、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する。
問264の解説
オキサリプラチン(エルプラット®):白金錯体製剤:DNA合成阻害
オキサリプラチンは白金複合体で、がん細胞のDNAと結合することで、DNA鎖内及びDNA鎖間に架橋を形成します。このDNA−白金付加体がDNAの複製を阻害し、がん細胞をアポトーシスへ誘導し、抗腫瘍効果を示します。
レボホリナートカルシウム(アイソボリン®):活性型葉酸製剤:5−FUの抗腫瘍効果増強
フルオロウラシルは、代謝されフルオロデオキシウリジン一リン酸(FdUMP)となり、チミジル酸合成酵素(TS)と結合し、TS活性を低下させる。その結果、チミジル酸合成が抑制され、DNA合成が阻害される。レボホリナートは細胞内で還元され、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸となり、FdUMP及びTSと複合体を形成し、TSの活性をさらに低下させるので、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する作用がある。
フルオロウラシル(5−FU®):ピリミジン代謝拮抗薬:DNA合成阻害
腫瘍細胞内に取り込まれた5-FUが代謝され、5-フルオロデオキシウリジル酸(5-FdUMP)となり、チミジル酸合成酵素を阻害し、チミジル酸合成を抑制することで、DNA合成が阻害される。
1.「〇」フルオロウラシル(5−FU®)についての記述です。
2.「×」葉酸代謝拮抗薬についての記述です。
3.「×」カルフィルゾミブ(カイプロリス®)は、プロテアソームを阻害して、アポトーシスを誘導します。
4.「×」(ティーエスワン®)に含まれているギメラシルは、ジヒドロピリミジン脱水素酵素を阻害して、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強します。
5.「〇」レボホリナートカルシウム(アイソボリン®)の記述です。
問264の解答:1と5
問265(実務)
FOLFOX療法の2コース目の点滴時に手のしびれの訴えがあったと看護師から薬剤師に連絡があった。薬剤師が患者と面談を行ったところ、「冷たいものに触れるとビリビリとする感覚が前回からあります。また、文字を書きにくい日や、ボタンをかけにくい日が増えてきました。」とのことだった。薬剤師は、このしびれをFOLFOX療法の副作用と考え、症状を改善するために担当医と話し合うこととした。
このしびれの対応に関し、薬剤師が担当医へ提案する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.プレガバリンの追加
2.グラニセトロン塩酸塩の追加
3.フルオロウラシルからパクリタキセルへの変更
4.オキサリプラチンの減量又は休薬
5.レボホリナートカルシウムの増量
1.「〇」プレガバリン(リリカ®)は、神経障害性疼痛に対し効果があります。
2.「×」グラニセトロン(カイトリル®)は、5-HT3受容体拮抗型制吐剤なので、吐き気に対する対処薬です。
3.「×」パクリタキセル(タキソール®)も、副作用で末梢神経障害を生じやすい薬です。
4.「〇」設問の症状は、オキサリプラチン(エルプラット®)による副作用と考えられるので、減量又は休薬は方法の1つです。
5.「×」上記のレボホリナートカルシウム(アイソボリン®)を参照