問260-261
50歳男性。身長165cm、体重72kg。5年前に脂質異常症及び高血圧症の診断を受け、処方1による治療が行われていた。本日、外来診療において、脂質異常症のコントロールが不十分であることから、処方2が追加されることになった。
(処方1)
ピタバスタチンCa錠1mg 1回1錠(1日1錠)
アゼルニジピン錠8mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 28日分
(処方2)
ペマフィブラート錠0.1mg 1回1錠(1日2錠)
1日2回 朝夕食後 28日分
(身体所見及び検査値)
血圧128/82mmHg、総ビリルビン0.8mg/dL、AST 24 IU/L、ALT 12 IU/L、血清クレアチニン0.8mg/dL、尿酸5.0mg/dL、BUN 12mg/dL、LDL-C 120mg/dL、HDL-C 50mg/dL、TG(トリグリセリド)348mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 99mEq/L、空腹時血糖 120mg/dL、HbA1c 5.8%
問260(薬理)
処方2の薬物の脂質異常症改善作用に関するのはどれか。2つ選べ。
1.HDLコレステロールの低下
2.リポタンパク質リパーゼ(LPL)の活性化
3.アポタンパク質C-Ⅲ(ApoC-Ⅲ)発現の抑制
4.アポタンパク質A-Ⅰ(ApoA-Ⅰ)発現の抑制
5.脂肪酸のβ酸化の抑制
問260の解説
設問の血液検査結果から注目するのは、TG。
TG(空腹時採血)で150mg/dL以上なら高トリグリセライド血症(随時採血なら175mg/dL以上)
ペマフィブラート(パルモディア®): PPARα活性化薬
ペマフィブラートはPPARα(peroxisome proliferator-activated receptor α)を活性化し、リポたん白質リパーゼの発現量を増加させ、TG値の低下、HDL-C値の増加を示します。
フィブラート作用機序
1.「×」HDLコレステロール値を増加させます。
2.「〇」リポタンパク質リパーゼ(LPL)を活性化します。
3.「〇」アポタンパク質C-Ⅲ(ApoC-Ⅲ)発現を抑制します。
4.「×」アポタンパク質A-Ⅰ(ApoA-Ⅰ)発現を促進します。
5.「×」肝細胞で脂肪酸のβ酸化を促進させ、TG合成を抑制します。
補足Ⅰ:PPARα活性化薬とアポ(リポ)タンパク質の関係
アポ(リポ)タンパク質の種類 | アポ(リポ)タンパク質の作用 | PPARαを活性化したとき |
A-Ⅰ | HDL生成促進 | 発現促進 |
C-Ⅱ | リポタンパクリパーゼ(LPL)活性化 | |
C-Ⅲ | リポタンパクリパーゼ(LPL)抑制 | 発現抑制 |
問260の解答:2と3
問261(実務)
処方2の追加により発現する可能性がある副作用を回避するために、薬剤師が定期的に確認すべき検査項目として重要性の高いのはどれか。2つ選べ。
1.収縮期血圧
2.HbA1c
3.血清クレアチニン
4.HDL-C
5.クレアチンキナーゼ
スタチン系のピタバスタチン(リバロ®)と、フィブラート系のペマフィブラート(パルモディア®)を併用する際に注意すべき副作用として、横紋筋融解症があります。
横紋筋融解症は、骨格筋が破壊されて、筋肉中に存在するクレアチンキナーゼ(※)やミオグロビンなどが、血液中に放出されて、腎機能が低下する疾患です。
症状として、筋肉痛・脱力感・赤褐色尿(ミオグロビン尿)があります。
(※クレアチンキナーゼ:筋肉細胞におけるエネルギー代謝に関与する酵素)
腎機能を確認するために、血清クレアチニン値も確認します。
血清クレアチニンは、筋肉に含まれているタンパク質の老廃物で、通常は、腎臓の糸球体でろ過され尿中に排泄されますが、腎機能が低下すると、血液中に増えてきます。(血清クレアチニンの正常値は、男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下)