問246-247
55歳女性。数か月前から身体のだるさや疲れやすさを感じていた。最近、まぶたが重く物が見えにくくなってきた。さらに、食べ物を飲み込みにくくなったため、近医を受診した。重症筋無力症を疑った医師から、診断のための検査をするにあたりエドロホニウム試験について薬剤師に問合せがあった。
エドロホニウムに関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
ただし、図は、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の活性中心において、アセチルコリンが加水分解される際の反応機構及びエドロホニウムの構造式を示す。
0010746322022.12.22
1.セリン及びトリプトファンと相互作用して、AChEを不可逆的に阻害する。
2.セリンをリン酸化して、AChEを不可逆的に阻害する。
3.トリプトファンとカルバモイル化して、AChEを可逆的に阻害する。
4.セリンと共有結合して、AChEを可逆的に阻害する。
5.トリプトファンと相互作用して、AChEを可逆的に阻害する。
重症筋無力症
重症筋無力症は、骨格筋と神経のつなぎ目である、神経筋接合部の筋肉側に存在するアセチルコリン受容体が自己抗体(抗アセチルコリン受容体抗体)によって、破壊されて起こる自己免疫疾患です。
全身の筋力低下・易疲労性・眼瞼下垂・複視といった症状が現れます。
エドロホニウム(アンチレクス®):可逆的ChE阻害薬
エドロホニウム(アンチレクス®)は、アセチルコリンを分解する、可逆的なコリンエステラーゼ(ChE)阻害薬なので、投与すると、コリン作動性受容体に、一時的にアセチルコリンが増えます。
投与後、眼筋等の脱力状態の回復の有無により、重症筋無力症の診断に使用されます。
問246の解説
- 「×」
- 「×」
ポイント①検査で不可逆的に阻害する薬を使用したら、元に戻るまでに時間がかかるので使わない。(※不可逆的なChE阻害剤:サリン)
- 「×」
- 「×」
- 「〇」
ポイント②図より、トリプトファンとアセチルコリンが反応前後で一緒に存在しているが、アセチルコリンは加水分解されている。
ポイント③アセチルコリンとエドロホニウムの第4級アンモニウム構造は一致
ポイント②・③より、エドロホニウムは、トリプトファンと相互作用してAChEを可逆的に阻害すると考えられる。
アセチルコリンの構造
問246の解答:5
問247(実務)
1.d-クロルフェニラミンマレイン酸
2.アトロピン硫酸塩水和物
3.アドレナリン
4.ネオスチグミンメチル硫酸塩
5.シクロスポリン
エドロホニウムが効き過ぎた場合は、アセチルコリンが増えている状態なので、アセチルコリンを遮断する薬剤を準備すればいいので、選択肢から抗コリン薬を選びます。
1.「×」d-クロルフェニラミン(ポララミン®):H1ブロッカー
抗ヒスタミン薬
2.「〇」アトロピン:抗コリン作用
アセチルコリン、ムスカリン様薬物に対し競合的拮抗作用
3.「×」アドレナリン(ボスミン®):α受容体・β受容体刺激薬
4.「×」ネオスチグミン(ワゴスチグミン®):可逆的ChE阻害薬
コリンエステラーゼの可逆的阻害薬で、アセチルコリンの分解を抑制。
5.「×」シクロスポリン(ネオーラル®・サンディミュン®):免疫抑制剤
ヘルパーT細胞の活性化を抑制し、サプレッサーT細胞の活性化を阻害しない。