問276-277
55歳男性。ゲーム開発企業に勤務しており、勤務時間中はディスプレイを見ることが多い。
1年前より、目のかすみと視野の一部が見えづらく感じたため、眼科を受診したところ、緑内障と診断され、処方1にて治療している。
今回の受診の際、眼圧が高くなっていることを指摘され、処方2が追加となった。
(処方1)
ビマトプロスト点眼液0.03% (2.5mL/本) 1本
1回1滴 1日1回 朝 両目点眼
(処方2)
チモロールマレイン酸塩持続性点眼液0.25% (2.5mL/本) 1本
1回1滴 1日1回 朝 両目点眼
〔添加剤〕 ジェランガム、トロメタモール、ベンゾドデシニウム臭化物、D-マンニトール
問276(実務)
薬剤師が行う処方2に関する説明のうち、適切なのはどれか。1つ選べ。
1.処方2の点眼液を先に点眼してください。
2.目のべたつきが持続することがあります。
3.点眼後はすぐにまばたきをし、薬液をなじませてください。
4.血圧が上昇することがあります。
5.2つの点眼液は、間隔をあけず続けて点眼してください。
問276の解説
ビマトプロスト(ルミガンⓇ):プロスタグランジン(PG)製剤:ぶどう膜強膜からの房水流出促進
チモロール(チモプトールⓇ):β遮断薬:房水産生抑制
医師の指示が無い場合は、以下のような順番で点眼することが多いです。
①水溶性点眼剤:クラビットⓇ点眼液など
②懸濁性点眼剤:フルメトロンⓇ点眼液など
③ゲル化点眼剤:チモプトールⓇXE点眼液・ ミケランⓇLA点眼液など
④眼軟膏:プレドニン眼軟膏など
※他の点眼方法として、よく効かせたい点眼薬を最後にするという方法もあります。
1.「×」チモロール持続性点眼剤(ゲル化点眼剤)は、ビマトプロストの後に点眼します。
(順番:ビマトプロスト点眼剤→チモロール持続性点眼剤)
2.「〇」チモロール持続性点眼剤は、涙液と接するとゲル化するため、べたつき・霧視が数分間生じます。
3.「×」点眼後すぐにまばたきをすると、点眼液が眼から流れ出たり、口腔内へ移行し、全身的な副作用が出てしまうことがあります。(眼から口腔までは、涙点→涙小管→涙のう→鼻涙管→鼻粘膜→口腔と繋がっています)
4.「×」チモロールは、β遮断作用を有するので、血圧は低下することが考えられます。
5.「×」複数の点眼薬を使用する際、間隔をあけずに点眼すると、眼から溢れ出たり、鼻や口腔内へ移行してしまい、結膜嚢内に留まっている時間が短くなるので、5分間以上の間隔をあけて点眼します。
※複数の点眼剤を使用する際、途中でゲル化点眼剤を使用しなければならないときは、
ゲル化点眼剤を点眼する前は、10分以上間隔をあけ、
ゲル化点眼剤を点眼した後は、他の点眼剤を使用する前に、十分な間隔をあける必要があります。
そのため、ゲル化点眼剤は、最後に点眼することが望ましいです。
問276の解答:2
問277(薬剤)
処方2の製剤が持続性を示す理由として、正しいのはどれか。1つ選べ。
1.油性の溶剤を用いて、薬効の発現を緩やかにしている。
2.薬物と添加剤が不溶性の複合体を形成している。
3.体温により、結膜嚢での薬物滞留性を向上させる物質が添加されている。
4.涙液の成分により、結膜嚢での薬物滞留性を向上させる物質が添加されている。
5.涙液のpHで徐々に溶解する懸濁粒子が配合されている。
1.「×」現在は、薬価収載されている商品が無い。
2.「×」チモロール持続性点眼は、薬物と添加剤が不溶性の複合体を形成していません。4を参照
3.「×」チモロール持続性点眼(リズモンⓇTG点眼)は、添加物にメチルセルロースが入っています。
メチルセルロースは、熱応答性ゲル製剤で、低温では液状ですが、眼表面温度でゲル状となります。
4.「〇」チモロール持続性点眼(チモプトールⓇXE点眼)は、添加物にジェランガムが入っています。
ジェランガム(ヘテロ多糖)は、涙液中のNa+と反応すると、ゲル状となります。
※カルテオロール持続性点眼(ミケランLAⓇ点眼)は、添加物にアルギン酸が入っています。
アルギン酸は、涙液中のCa2+と反応し増粘するため、眼球表面に薬効成分が滞留する時間を延ばします。
5.「×」ピレノキシン懸濁性点眼(カタリンⓇ)に関する記述です。