問282-283
34歳女性。身長165cm、体重40kg。
統合失調症の診断を受け、外来にてリスペリドン経口製剤で治療を受けていた。
内服継続にて症状は安定してきたため、医師が患者にリスペリドンの持効性注射剤について説明したところ、患者はその使用を希望した。
そこで、リスペリドンの投与並びに持効性注射剤へ剤形変更する際の注意点について、担当医から医薬品情報管理室に確認があった。
(検査値)
AST36IU/L、ALT18IU/L、BUN5.8mg/dL、血清クレアチニン0.92mg/dL白血球4,200/μL、赤血球340×104/μL、Hb10.5g/dL血小板32.5×104/μL
(処方)
リスペリドン持効性懸濁注射液25mg 1回25mg 2週間間隔で、臀部に筋肉注射する
添加剤 | |
バイアル中 | dl-ラクチドグリコリド共重合体 |
専用懸濁用液 | カルメロースナトリウム、塩化ナトリウム
リン酸水素二ナトリウム二水和物、ポリソルベート 無水クエン酸、水酸化ナトリウム |
問282(実務)
薬剤師が医師に伝える注意点として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.毎回、同一部位に注射する。
2.最大量に増量しても効果が認められない場合は、クロザピンを併用する。
3.薬剤の調製は、冷所から常温に戻して行う。
4.無月経や月経障害が起こる可能性を、患者に指導する。
5.悪性症候群を疑う症状が現れた際には、次回の投与量を減量する。
問282の解説
1.「×」リスペリドン持効性懸濁注(リスパダール コンスタⓇ筋注)は、左右臀部の外側上部に注射します。左右交互に注射し、同一部位への反復注射は行いません。
2.「×」クロザピン(クロザリルⓇ)は、単剤で使用し、他の抗精神病薬と併用しません。
クロザピン(クロザリルⓇ):治療抵抗性統合失調症治療薬
クロザピン(クロザリルⓇ)の作用機序は不明ですが、D2受容体遮断作用に依存しない中脳辺縁系ドパミン神経に対する抑制が考えられています。
3.「〇」リスペリドン持効性懸濁注(リスパダール コンスタⓇ筋注)の調製は、冷所から常温に戻してから行います。冷所から取り出した後は、25℃以下で保管し、7日以内に調製します。
懸濁後は、25℃以下で保管し、投与直前に、振盪し、再懸濁させ、6時間以内に投与します。
4.「〇」リスペリドンによるD2受容体遮断作用により、高プロラクチン血症が生じ、無月経や月経障害が起こる可能性があります。
5.「×」悪性症候群(無動緘黙・強度の筋強剛・嚥下困難・頻脈・血圧の変動・発汗などが発現し、それに引き続き発熱)を疑う症状が現れた際は、投与を中止します。
問282の解答:3と4
問283(薬剤)
剤形変更後の製剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
1.生分解性高分子に薬物を封入して、長期間の薬物放出を行うことができる。
2.脂質二重膜により薬物を保護することで、長期間安定に保存できる。
3.薬物結晶の表面を生分解性高分子でコーティングしている。
4.分子内に親水性部と疎水性部をもつ高分子が、自己会合して薬物を保持している。
5.水溶性高分子を結合させた脂質を用いて、静脈内での滞留性が改善されている。
リスペリドン持効性懸濁注(リスパダール コンスタⓇ筋注)は、リスペリドンを生分解性高分子のdl-ラクチド・グリコリド共重合体(≒乳酸・グリコール酸共重合体)のマイクロ粒子内に包埋することにより、2週間に1回の臀部筋肉内投与で、長期間の薬物放出ができるように設計された徐放性製剤です。
1.「〇」
2.「×」
3.「×」
4.「×」
5.「×」