問272-273
67歳男性。共同浴場に入浴に行った後、38.6℃の発熱があり薬局で購入したイブプロフェンを内服したが、1週間発熱が続き食事が摂れない状態となったため受診した。
下記検査結果よりレジオネラ肺炎と診断され、入院後にレボフロキサシンの投与が検討された。
(入院時所見)
身長177cm、体重61kg、血圧138/76mmHg、心拍101回/分、
SpO2 96%、心音・呼吸音に異常なし
(入院時検査値)
血液生化学: CRP15.2mg/dL、ALT 18IU/L、AST 28IU/L、
BUN 22mg/dL、クレアチニンクリアランス 70mL/min
尿検査:蛋白(-)、潜血(-)、糖(-)、レジオネラ抗原(+)
胸部X線所見:右上から中肺野に浸潤影及びすりガラス影を認めた。
問272(薬剤)
レボフロキサシン投与後の血中濃度推移の模式図を下に示す。
この薬剤の投与設計の記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
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1.β-ラクタム系抗生物質と同様に、時間依存性の抗菌薬である。
2.血中濃度をMICとMPCの間の濃度域(MSW)に設定する。
3.副作用を回避するため、血中濃度のトラフ値を測定する。
4.PK/PDパラメータとして、Cmax /MICまたはAUC/MICを用いる。
5.投与間隔に対する、MIC以上の濃度維持時間(TAM)ができるだけ長くなるように投与間隔を調整する。
問272の解説
抗菌薬のPK(薬物動態)/PD(薬力学)理論で覚える単語
MIC:最小発育阻止濃度
AUC:血中濃度時間曲線下面積
Cmax:最大血中濃度
Time above MIC(TAM%):薬物の血中濃度が、最小発育阻止濃度を超えている時間割合
PAE(Post-antibiotic Effect):抗菌薬がMIC以上の濃度で細菌に作用した後、抗菌薬の血中濃度がMIC以下になっても、細菌の増殖抑制作用があること。
PK/PD理論に基づく抗菌薬の分類
分類 | パラメーター | 抗菌薬 | 効果を上げる方法 |
時間依存型
(PAE-) |
Time above MIC(TAM%) | β‐ラクタム系 | 投与回数を増やす |
濃度依存型 | Cmax/MIC
AUC/MIC |
ニューキロノン系
アミノグリコシド系 |
投与量を増やす |
時間・濃度依存
(PAE+) |
AUC/MIC | マクロライド系
グリコペプチド系 |
1.「×」レボフロキサシン(クラビットⓇ)は、ニューキノロン系抗菌剤なので、濃度依存性の抗菌薬です。
2.「×」ニューキノロン系などの濃度依存型抗菌薬では、Cmaxを副作用が出ない一番高い所まで、高めた方が効果的なので、MICとMPCの間(MSW)に設定せず、MPCを超えるところで設定します。
PKPD理論(MIC MSW MPC)
3.「×」副作用を回避するため、血中濃度のトラフ値を測定するのは、濃度依存型抗菌薬では、アミノグリコシド系抗生剤です。
※トラフ値とは、薬物を反復投与したときの定常状態における最低血中薬物濃度のこと。(反復投与している薬物の投与直前の値)
TDMをするアミノグリコシド系抗生剤では、トラフ値を一定濃度以下にすると、腎毒性などの副作用を回避するのに役立ちます。
4.「〇」濃度依存型抗菌薬のPK/PDパラメータとして、Cmax /MICまたはAUC/MICを用います。
5.「×」投与間隔に対する、MIC以上の濃度維持時間(TAM)ができるだけ長くなるように投与間隔を調整するのは、β‐ラクタム系のような時間依存型の抗生剤です。
問272の解答:4
問273(実務)
前問で適切と考えられた記述に従った実際のレボフロキサシンの投与設計として、正しいのはどれか。1つ選べ。
1.1回500mgを1日2回、12時間毎に1時間かけて点滴する。
2.1回500mgを1日1回、12時間かけて点滴する。
3.1回500mgを1日1回、1時間かけて点滴する。
4.1回250mgを1日3回、8時間毎に30分かけて点滴する。
5.1回250mgを1日2回、12時間毎に30分かけて点滴する。
レボフロキサシン(クラビットⓇ)は、ニューキノロン系抗菌剤で、濃度依存型の抗菌薬です。
濃度依存型抗菌薬では、Cmaxを副作用が出ない一番高い所まで、高めた方が効果的。
よって設問の選択肢では、1回500mgを1日1回、1時間かけて点滴するが適切だと考えられます。
1.「×」
2.「×」
3.「〇」
4.「×」
5.「×」