問266-267
75歳男性。体重67kg。
農作業中に意識を失い倒れているところを発見され救急外来へ搬送された。
痙れん性てんかん重積状態と診断され、
ジアゼパム注射液10mgを投与したが、痙れんが持続したため、
ホスフェニトインナトリウム注射液1,500mgが追加投与された。
痙れんが改善した後、ホスフェニトインナトリウム7.5mg/kg/dayで維持された。
経口摂取可能となったため以下の処方に変更され、
7日間服用後の患者の定常状態における平均血漿中フェニトイン濃度(Css)は10μg/mLであった。
(処方)
フェニトイン散10%1回1g (1日3g)
1日3回 朝昼夕食後 7日分
問266(実務)
追加投与されたホスフェニトインナトリウム注射液について薬剤師が医療スタッフに情報提供した内容として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.強酸性薬剤であるため他剤と配合できません。
2.生理食塩液で希釈して投与してください。
3.静脈内に急速に投与してください。
4.血管痛や壊死が生じやすいため動脈内に投与してください。
5.フェニトインの血中濃度を定期的に測定し副作用に注意してください。
問266の解説
1.「×」ホスフェニトインNa(ホストインⓇ)注は、弱塩基性(pH:8.5~9.1)です。
(※フェニトインが酸性薬物で、Na塩の形にして溶解しているから弱塩基性の注射)
※フェニトイン(アレビアチンⓇ)注は、強アルカリ性であるので、他剤とは配合できません。
また、pHが低下するとフェニトインの結晶が析出します。
また、動脈内に注射した場合には、末梢の壊死を起こすおそれがあるので、動脈注射はしません。
2.「〇」生食や5%ブドウ糖に希釈して投与。
3.「×」心停止、一過性の血圧低下、呼吸抑制等の循環・呼吸障害を起こすことがあるので、急速静注は行いません。
4.「×」ホスフェニトイン(ホストインⓇ)注は、静脈内に投与します。
5.「〇」フェニトインは、TDMの代表的な薬剤のため、血中濃度を定期的に測定し副作用に注意して下さい。
問266の解答:2と5
問267(薬剤)
その後、てんかんの痙れん発作が起こったためフェニトイン散10%の投与量を1日3.5g(フェニトインとして350mg/day)に増量したところ、Cssは20μg/mL となった。
フェニトインの代謝速度はミカエリス・メンテン(Michaelis-Menten)式に従うものとすると、この患者におけるミカエリス定数(Km)と最大消失速度(Vmax)に最も近い値の組合せはどれか。1つ選べ。
ただし、フェニトインは主に肝代謝により消失し、定常状態における消失速度は代謝速度に等しいと仮定する。
また、フェニトインのバイオアベイラビリティは100%とし、てんかんの発作前後ではKmとVmaxは変化しないものとする。
Km(μg/mL) | Vmax(mg/day) | |
1 | 2.0 | 330 |
2 | 2.5 | 360 |
3 | 2.5 | 390 |
4 | 4.0 | 420 |
5 | 4.0 | 460 |
ミカエリス・メンテン式は、v=Vmax・[S]/Km+[S]
(v:消失速度 ・ [S]:基質濃度 ・ Km:ミカエリス定数 ・ Vmax:最大消失速度)
設問より、増量後は、フェニトイン散10%の投与量を1日3.5g(フェニトインとして350mg/day)とあるのでv:消失速度は、350mg/day。
Cssが20μg/mLとあるので、[S]=20μg/mLとします。
あとは、選択肢を順番に代入していくと、選択肢4のときに等式が成り立ちます。
1.「×」
2.「×」
3.「×」
4.「〇」
v=Vmax・[S]/Km+[S]
350mg/day=420mg/day × 20μg/mL /4μg/mL + 20μg/mL
350mg/day=420mg/day × 20μg/mL / 24μg/mL
5.「×」
別解として、v=F(バイオアベイラビリティ)×Dpo(経口投与量)/τ(投与間隔)として、
フェニトインの増量前(300mg/day:Css=10μg/mL)後(350mg/day・Css=20μg/mL)で連立方程式を立てて、KmとVmaxを求めます。