問274-275
70歳男性。慢性下肢動脈閉塞症と診断され、半年前から右足底に潰瘍が出現し近医で治療を受けていた。
1週間前から増悪が認められ近医にて加療したが改善せず、入院にて保存的治療を行うこととなった。
創部の細菌培養検査によりMRSAが検出されたため、バンコマイシン塩酸塩1回1g(1日2回12時間毎)の点滴静注を開始した。
バンコマイシン塩酸塩1g点滴静注後の血中濃度を測定したところ、投与終了3時間後に14.1μg/mL、11時間後に6.9μg/mLであった。
投与開始後3日目(投与5回目直前)のトラフ値は10μg/mLであった。
ただし、ここではバンコマイシンの体内動態を1-コンパートメントモデルを用いて解析する。
問274(薬剤)
バンコマイシンの消失速度定数(h-1)に最も近い値はどれか。1つ選べ。
なお、ln2=0.693とする。
①0.069
②0.077
③0.086
④0.138
⑤0.173
問274の解説
設問より、血中のバンコマイシン濃度が、投与終了3時間後に14.1μg/mL、11時間後に6.9μg/mLとあるので、約8時間で半分になることが分かる。
バンコマイシンの体内動態を、1-コンパートメントモデルを用いて解析するとあるので、消失速度定数(ke)・半減期(t1/2)とすると、ke=ln2/t1/2が成り立つ。
ke=ln2/t1/2
=0.693/8(hr)
ke≒0.086(hr-1)
1.「×」
2.「×」
3.「〇」
4.「×」
5.「×」
問274の解答:3
問275(実務)
投与開始後5日目の点滴静注直後に全身にじん麻疹が出現し、バンコマイシンに対するアレルギーと考えられたため薬物の変更が検討された。
変更する薬物として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1.メロペネム
2.リネゾリド
3.セファゾリンナトリウム
4.テイコプラニン
5.フロモキセフナトリウム
バンコマイシン(グリコペプチド系抗生剤)のアレルギーが考えられたので、違う系統でMRSAに適応がある抗菌剤を選択します。
1.「×」メロペネム(メロペンⓇ):カルバペネム系抗生剤
2.「〇」リネゾリド(ザイボックスⓇ):オキサゾリジノン系抗菌剤
適応菌種として、リネゾリドに感受性のあるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
3.「×」セファゾリン(セファメジンⓇ):セフェム系抗生剤
4.「×」テイコプラニン(タゴシッドⓇ):グリコペプチド系抗生剤
適応菌種として、テイコプラニンに感受性のあるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
5.「×」フロモキセフ(フルマリンⓇ):セフェム系抗生剤