問304・305(病態/実務)
19歳男性。身長165cm、体重51kg。以前より、右足の痛みと腫れがあり、1ケ月前に父親とともに近所の整形外科を受診した。その2週間後、医師は骨腫瘍を疑い、大学病院を紹介した。精査の結果、大腿骨遠位の骨肉腫と診断され、加療のため昨日入院となった。入院時の検査結果は以下のとおりである。
(入院時の検査値)
赤血球 520 × 104/μL、Hb 14.3 g/dL、白血球 7,500/μL、
好中球 3,100/μL、血小板 15.8 × 104/μL、
血清クレアチニン 0.86 mg/dL、BUN 16.0 mg/dL、
AST 23 IU/L、ALT 22 IU/L、総ビリルビン 1.0 mg/dL
検査の結果、化学療法は施行可能と判断され、明日から以下の MAP 療法を実施することとなった。
(MAP療法)
| 投与量 | 投与スケジュール | |
| ドキソルビシン塩酸塩注射用 | 30 mg/m2/day | day 1,2 |
| シスプラチン注射液 | 120 mg/m2/day | day 1 |
| メトトレキサート注射液 | 12 g/m2/day | day21,28 |
* 1 コースは 35 日間で、2コース施行
問304(実務)
この患者の治療に関して、病棟担当薬剤師が実務実習中の学生の指導を行うこととなった。薬剤師が実務実習生へ説明する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.ドキソルビシン塩酸塩の総投与量が、500mg/m2以下であるのを確認すること。
2.シスプラチンは冷蔵庫に保管すること。
3.シスプラチンの点滴時間が長時間に及ぶ場合には、遮光して投与すること。
4.メトトレキサートは、静脈内投与開始から10分以内に終了するのが望ましいこと。
5.メトトレキサートの治療効果を高めるために、水分の摂取量を制限すること。
問304の解説
ドキソルビシン(アドリアシンⓇ):アントラサイクリン系抗腫瘍抗生物質
腫瘍細胞のDNAと複合体を形成し、DNAポリメラーゼやRNAポリメラーゼを阻害します。
シスプラチン(ランダⓇ):白金製剤
腫瘍細胞のDNAと結合し、細胞分裂を阻害します。
メトトレキサート(メソトレキセートⓇ):葉酸代謝拮抗薬
1.「〇」ドキソルビシンは、累積投与量が500mg/m2を超えると、心毒性のリスクが高くなります。
2.「×」シスプラチンは、冷蔵庫に保存すると、結晶が析出することがあるため、室温保存します。
3.「〇」シスプラチンは、光によって分解するので、長時間の点滴になる場合は、遮光投与します。
4.「×」MAP療法の高用量メトトレキサートは、通常、数時間かけて点滴静注します。
5.「×」メトトレキサートは、腎排泄型薬剤です。
腎臓でのメトトレキサートの結晶化を防ぐために、尿アルカリ化や十分な補液で、尿量を確保します。
問304の解答:1と3
問305(病態)
MAP療法による副作用を予防するために、この患者に投与すべきなのはどれか。2つ選べ。
1.アセタゾラミド
2.セベラマー
3.トリクロルメチアジド
4.ホリナートカルシウム
5.メスナ
問305の解説
高用量メトトレキサートの副作用対策です。
腎臓でのメトトレキサートの結晶化を防ぐために、尿アルカリ化や十分な補液での尿量確保と、拮抗薬を用います。
1.「〇」アセタゾラミド(ダイアモックスⓇ):炭酸脱水酵素阻害薬
炭酸脱水酵素(CO2 + H2O ⇄ H2CO3)阻害作用により、尿がアルカリ化します。
2.「×」セベラマー(フォスブロックⓇ・レナジェルⓇ):高リン血症改善薬
3.「×」トリクロルメチアジド(フルイトランⓇ):チアジド系利尿薬
4.「〇」ホリナートカルシウム(ロイコボリンⓇ):抗葉酸代謝拮抗薬
骨髄抑制などの副作用防止で用います。
5.「×」メスナ(ウロミテキサンⓇ):イホスファミド・シクロホスファミドによる、出血性膀胱炎の副作用発現抑制に用いられます。
問305の解答:1と4
