問300-301(病態・薬物治療/実務)
38歳男性。身長175cm、体重65kg。
腎機能及び肝機能は正常。仕事で海外出張が多く疲労気味だった。
帰国後、37℃台の微熱と痰がからむ咳が2週間続き、近医を受診した。
胸部X線検査の結果、肺に空洞を伴う結節性陰影を認めたため総合病院を紹介受診し、
諸検査を受けたところ肺結核と診断された。
問300(病態・薬物治療)
この患者の検査に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.インターフェロンγ遊離試験で陽性となる。
2.β-D-グルカンが陽性となる。
3.抗ガングリオシド抗体が陽性となる。
4.迅速ウレアーゼ試験で診断できる。
5.PCR検査で菌の同定ができる。
問300の解説
1.「〇」BCG接種に影響を受けない、インターフェロンγ遊離試験(IGRA)は、採取した末梢血に結核菌特異的抗原を混ぜて培養し、リンパ球がIFN-γを産生したら、陽性(結核菌に感染歴あり)となる試験です。(※ツベルクリン反応は、BCG接種でも陽性となります)
2.「×」真菌の細胞壁の構成成分である、β-D-グルカンが陽性なら、感染している菌種は分かりませんが、真菌感染しているといえます。
3.「×」ギラン・バレー症候群は、急性に四肢の筋力が低下する、自己免疫性の末梢神経疾患で、抗ガングリオシド抗体が陽性となる疾患です。
4.「×」迅速ウレアーゼ試験は、尿素を分解する酵素(ウレアーゼ)を産生する、ピロリ菌に感染しているかを調べる方法です。
5.「〇」PCR検査は、DNAを増幅させることで、どんな病原体(細菌・ウイルス)に感染しているかを調べる検査で、結核菌のプライマーを使えば、結核菌に感染しているかを同定できます。
問300の解答:1と5
問301(実務)
この患者に下記の薬剤が処方された。薬剤師による服薬指導内容として誤っているのはどれか。1つ選べ。
(処方1)
リファンピシンカプセル150mg 1回3カプセル(1日3カプセル)
イソニアジド錠100mg 1回3錠(1日3錠)
エタンブトール塩酸塩錠250mg 1回3錠(1日3錠)
ピラジナミド散 1回1.5g(1日1.5g)
1日1回 朝食前 7日分
(処方2)
ピリドキサールリン酸エステル水和物錠10mg 1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 7日分
1.視覚障害を起こすことがあるので、視力の低下に注意するよう指導する。
2.マグロを食べると頭痛が出現することがあるので、食べ過ぎないよう指導する。
3.全身倦怠感、黄疸、皮膚のかゆみが出現したら、すぐに連絡するように指導する。
4.尿や汗が赤く着色することを説明する。
5.処方2の薬剤は貧血予防のために処方されていることを説明する。
問301の解説
1.「〇」エタンブトール(エサンブトールⓇ・エブトールⓇ):ミコール酸の細胞壁への取込みを阻害。
視力障害(視神経炎)があらわれることがあるので、定期的な視力検査が必要。
2.「〇」イソニアジド(イスコチンⓇ):結核菌の細胞壁成分であるミコール酸の合成阻害。
イソニアジドは、ヒスタミンの代謝酵素を阻害するため、ヒスチジンを多く含む食品(マグロ)を大量に摂取すると、ヒスタミン中毒(頭痛・紅斑・嘔吐など)をおこすことがあります。
また、MAO阻害作用もあるため、チラミンを多く含む食品(チーズ・レバー・ワイン)を大量に摂取すると、アドレナリン作動性神経終末部において、蓄積されているカテコールアミンの遊離を促進するため、血圧上昇や動悸をおこすことがあります。
3.「〇」イソニアジド・リファンピシンは、重篤な肝障害があらわれることがあるので、定期的な肝機能検査が必要です。
4.「〇」リファンピシン(リファジンⓇ):細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼに作用し、RNA合成を阻害します。
リファンピシンは、尿・汗・唾液・涙などが赤色(橙赤色)に着色するので、ソフトコンタクトレンズが変色してしまうこともあります。
5.「×」イソニアジド(イスコチンⓇ)は、副作用として、末梢神経障害(しびれ)があらわれることがあるので、対処療法としてピリドキサール(ビタミンB6)を併用します。
問301の解答:5