問296-297(実務/病態・薬物治療)
50歳男性。喫煙20本/日、飲酒ビール500mL/日。
5年くらい前から会社の健康診断にて高血糖を指摘されており、
近医を受診して2型糖尿病と診断された。
その後、食事療法と運動療法を行うも改善が認められず、以下の薬剤を服薬することになった。
(処方)
メトホルミン塩酸塩錠250mg 1回1錠(1日2錠)
1日2回 朝夕食後 14日分
服用3ケ月後の定期受診時に病院薬剤師は、
診療録より近日冠動脈造影検査を予定していること、
しばしば軽度の低血糖症状を自覚したこと、
朝食を食べないことも多く、よく飲み忘れるとの情報を得た。
身体並びに検査結果は以下のとおりである。
(身体並びに検査結果)
身長168cm、体重85kg、BMI 30.1、血圧 146/90mmHg、
HbA₁c 8.2%、空腹時血糖 190mg/dL、
eGFR 55mL/min/1.73m2、
総コレステロール 220mg/dL、TG(トリグリセリド) 180mg/dL、
HDL-C 54mg/dL、LDL-C 130mg/dL、
尿糖(+)、尿蛋白(+)
問296(実務)
患者への服薬指導の内容として適切なのはどれか。2つ選べ。
1.アルコールの摂取は一切しないように再度指導した。
2.冠動脈造影検査前後も処方薬の服用を継続するよう説明した。
3.下痢・嘔吐などの症状が出ていないかを確認し、服用中に出た場合、服用を一旦中止し、医師に相談することを説明した。
4.自動車の運転時に低血糖の症状を感じた場合、速やかに安全に停車し、糖分補給する必要があることを説明した。
5.飲み忘れていた頻度を確認し、食後でないと副作用のリスクがあがるため食後服用を説明した。
問296の解説
メトホルミン(メトグルコⓇ):ビグアナイド系血糖降下薬
肝臓での糖新生を抑制して、血糖降下作用を示します。
1.「×」過度のアルコール摂取は、肝臓での乳酸代謝が低下し、乳酸アシドーシスがおこることがあるので、禁忌となっています。
2.「×」緊急検査を除いて、ヨード造影剤を用いる検査(冠動脈造影検査など)の際は、腎機能が一時的に低下するため、乳酸アシドーシスがおこりやすくなります。
そのため、服用を検査前に一時的に中止し、ヨード造影剤投与後48時間も服用を中止します。
3.「〇」下痢・嘔吐・食事摂取不良・発熱などの体調不良時(シックディ)は、脱水状態から循環不全となり、乳酸アシドーシスがおこりやすくなるので、服用を一旦中止し、医師に相談する必要があります。
4.「〇」運転中に、低血糖症状を感じた場合、速やかに安全に停止し、糖分(ブドウ糖)を補給する必要があります。
5.「×」メトホルミンは、食直前または食後に服用します。
問296の解答:3と4
問297(病態・薬物治療)
本症例の糖尿病治療強化のために追加できる薬剤及び用法として適切なのはどれか。2つ選べ。
1.エンパグリフロジン錠を朝食後に投与する。
2.レパグリニド錠を朝食後に投与する。
3.グリメピリド錠を就寝前に投与する。
4.ボグリボース錠を夕食後に投与する。
5.セマグルチド錠を空腹時に投与する。
問297の解説
1.「〇」エンパグリフロジン(ジャディアンスⓇ):SGLT2阻害薬
腎臓の近位尿細管に存在する、ナトリウム-グルコース共役輸送担体2(SGLT2)を阻害することにより、腎臓でのグルコース再吸収を阻害し、尿中へのグルコース排泄を促すことにより、血糖を低下させます。1日1回朝食前または朝食後に服用します。
2.「×」レパグリニド(シュアポストⓇ):速効型インスリン分泌促進薬
膵臓のランゲルハンス島β細胞に作用して、SU剤よりも速く、インスリン分泌を促進させます。
食後高血糖に効果的なので、毎食直前に服用します。
3.「×」グリメピリド(アマリールⓇ):SU剤
SU剤は、膵臓のランゲルハンス島β細胞に作用して、インスリン分泌を促進させます。
低血糖がおこりやすいので、朝または朝夕の食前または食後に服用します。
4.「×」ボグリボース(ベイスンⓇ):α-グルコシダーゼ阻害薬
α-グルコシダーゼ阻害薬は、2糖類から単糖への分解を阻害し、食後過血糖を改善するため、食直前に服用します。
5.「〇」セマグルチド(リベルサスⓇ):GLP-1受容体作動薬
胃内容物により吸収が低下するため、1日のうち最初の食事または飲水の前(空腹状態)に服用します。また、服用後、少なくとも30分は、飲食や他の薬剤の服用を避けます。
問297の解答:1と5