第109回 薬剤師国家試験問題 問294-295(膵臓がん(FOLFIRINOX療法)) | 積小為大!!  健康・社会保険・労働に関すること

第109回 薬剤師国家試験問題 問294-295(膵臓がん(FOLFIRINOX療法))

病態・実務
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67歳女性。身長155cm、体重43kg。2年前より心窩部痛を自覚し、外来を受診。

CT検査などで膵臓がん、肝転移(StageⅣ)と診断された。

一次治療として、フルオロウラシル+イリノテカン塩酸塩+オキサリプラチン+レボホリナート(FOLFIRINOX)療法を導入した。

1クール目Day8に発熱があり再来院した。

処方1を服用中であり、全身倦怠感が強く入院加療となった。

担当医から追加処方(処方2)の連絡を受けて、

カンファレンスで今後の方針について協議することになった。

 

(再来院時の患者背景)

パフォーマンスステータス(PS)1

腋窩温38.5℃

血圧 120/80mmHg

 

(処方1)

酸化マグネシウム錠250mg   1回1錠(1日3錠)

1日3回   朝昼夕食後 14日分

 

(処方2)

レボフロキサシン錠500mg   1回1錠(1日1錠)

1日1回 朝食後   7日分

アセトアミノフェン錠200mg   1回2錠

発熱時 10回分(20錠)

 

(検査値)

項目 Day1 Day8
白血球(/μL) 7,800 1,400
好中球(/μL) 5,800 300
赤血球(×104/μL) 400 380
ヘモグロビン(g/dL) 12.3 11.9
血小板(×104/μL) 22 20
AST/ALT(IU/L) 20/21 30/29
eGFR(mL/min/1.73m2 89 70

 

問294(実務)

薬剤師が行う内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。

 

1.腋窩温や検査値から発熱性好中球減少症を疑った。

 

2.フィルグラスチムの投与を提案した。

 

3.酸化マグネシウムによるレボフロキサシンの吸収増加について情報提供した。

 

4.レボフロキサシンの用量を250mgに減量することを提案した。

 

5.肝障害があるので、アセトアミノフェンの中止を提案した。

 

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問294の解説

パフォーマンスステータス(PS):全身状態の指標の1つ

0 活動できる
1 激しい活動は制限される。歩行可能で軽作業は可能
2 歩行可能。身の周りのことは可能だが、作業はできない
3 限られた身の周りのことしかできない
4 動けない

 

フォルフィリノックス(FOLFIRINOX)療法:フルオロウラシル・イリノテカン・オキサリプラチンに、フルオロウラシルの増強剤(レボホリナート)を加えた、膵臓がんの治療法です。

 

フルオロウラシル(5−FU):代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)

ウラシルに似た構造を持ち、チミジル酸合成酵素を阻害することで、チミジル酸の合成を抑制して、DNA合成を阻害します。

 

イリノテカン(トポテシン・カンプト):トポイソメラーゼ阻害薬

トポイソメラーゼⅠを阻害することにより、DNA合成を阻害します。

(※トポイソメラーゼⅠ:DNA複製の際、2本鎖DNAのうち1本だけを切断し、再結合させる酵素)

 

オキサリプラチン(エルプラット):白金製剤

がん細胞の2本鎖DNAと架橋構造を作り、DNA複製を阻害します。

 

レボホリナート(アイソボリン):フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強

フルオロウラシルが、チミジル酸合成酵素を阻害する働きを、レボホリナートが補強し、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を高めます。

 

酸化マグネシウム(マグミット):制酸・緩下剤

 

レボフロキサシン(クラビット):ニューキノロン系抗菌薬

細菌のDNAジャイレース・トポイソメラーゼⅣを阻害して、DNA複製を阻害します。

 

アセトアミノフェン(カロナール):解熱鎮痛薬

 

1.「〇」FOLFIRINOX療法をしており、腋窩温が、38.5℃で、好中球が300/μLとなっているので、発熱性好中球減少症を疑います。

(※発熱性好中球減少症:がん化学療法などで、好中球が500/μL以下に減少し、37.5℃以上の発熱を呈している状態のこと。)

 

 

2.「〇」フィルグラスチム(ジーラスタ):G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)製剤

好中球前駆細胞から好中球への分化を促進し、好中球数を増加させます。

 

 

3.「×」ニューキノロン系抗菌薬は、2価以上の金属イオンと一緒に服用すると、キレートを形成して、吸収が低下するため、1~2時間間隔をあけて服用します。

 

 

4.「×」レボフロキサシンは、腎排泄型薬物です。

検査値よりDay8のeGFR(mL/min/1.73m2)が70(正常値:60.0 mL/min/1.73m2以上)とあるので、250mgに減量しなくてもよいと考えます。

 

 

5.「×」アセトアミノフェンは、重篤な肝障害がおこることがあります。

検査値よりDay8のAST/ALT(IU/L)が30/29(正常値:両方とも30以下)とあるので、中止しなくてもよいと考えます。

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問295(病態・薬物治療)

この患者の病態に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

 

1.末梢における好中球の破壊が亢進している。

 

2.CRPが上昇している可能性が高い。

 

3.口内炎や咽頭痛を発症しやすい。

 

4.高度な貧血が認められる。

 

5.薬剤に対するアレルギーにより発症したと考えられる。

 

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問295の解説

1.「×」FOLFIRINOX療法をしているため、骨髄での好中球産生抑制が考えられます。

 

 

2.「〇」CRPは炎症や細胞破壊がおこると増えるマーカーなので、上昇している可能性が高いです。

 

 

3.「〇」FOLFIRINOX療法をしているため、口内炎や咽頭痛を発症しやすいと考えられます。

 

 

4.「×」検査値よりDay8のヘモグロビンが11.9(g/dL)(正常値:12.0~16.5)とあるので、高度な貧血は認められません。

 

 

5.「×」FOLFIRINOX療法による、発熱性好中球減少症により発症したと考えます。

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