問284-285
76歳男性。身長165cm、体重70kg。
Ⅳ期非小細胞肺がんに対する2次治療として、ドセタキセル+ラムシルマブ併用療法の1コース目を施行したところ、7日後に38℃の発熱がみられた。
担当医は2コース目(1コース目施行3週間後)を施行するにあたり、カンファレンスを実施した。
そこで、ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)注射液について、病棟担当薬剤師に質問した。
検査値(1コース施行後7日目)
赤血球380×104/μL、Hb12.2g/dL、Ht39%、白血球720/μL、好中球380/μL、血小板10.8×104/μL、CRP4.8mg/dL
第108回 問284
問284(実務)
2コース目の化学療法実施時に、ペグフィルグラスチムを使用する際の注意点として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.ドセタキセル+ラムシルマブ併用療法当日に、1日1回単回皮下投与する。
2.ドセタキセル+ラムシルマブ併用療法当日から、1日1回連日皮下投与する。
3.ドセタキセル+ラムシルマブ併用療法終了後24時間あけて、1日1回単回皮下投与する。
4.ドセタキセル+ラムシルマブ併用療法終了後24時間あけて、1日1回連日皮下投与する。
5.副作用として骨痛や腰痛等が現れた場合は、非ステロイド性抗炎症薬を投与する。
6.副作用として骨痛や腰痛等が現れた場合は、化学療法を中止する。
問284の解説
ドセタキセル(タキソテールⓇ):タキソイド系抗悪性腫瘍薬(微小管阻害薬)
ラムシルマブ(サイラムザⓇ):抗悪性腫瘍薬(抗VEGFR-2※モノクローナル抗体)
※ Vascular Endothelial Growth Factor Receptor-2(血管内皮増殖因子受容体2)
ペグフィルグラスチム(ジーラスタⓇ):G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)製剤
検査値より、ドセタキセル+ラムシルマブ併用療法による副作用で、骨髄抑制が起きて、発熱性好中球減少症が発症したと考えます。(発熱性好中球減少症:37.5℃以上の発熱かつ好中球数が500/μL、 または1000/μL以下で48時間以内に500/μLまで低下すると予測される病態)
1.「×」3を参照
2.「×」3を参照
3.「〇」がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制に、ペグフィルグラスチム(ジーラスタⓇ)を投与する場合、がん化学療法剤投与終了後の翌日以降、化学療法1サイクルあたり1回皮下投与します。
4.「×」3を参照
5.「〇」ペグフィルグラスチム(ジーラスタⓇ)の投与により骨痛、背部痛等が発現したら、非麻薬性鎮痛剤を投与します。
(骨痛、背部痛などは、ペグフィルグラスチム(ジーラスタⓇ)により、好中球が骨髄の中で急激に増え
るために起こる副作用と考えられています。)
6.「×」5を参照
問284の解答:3と5
問285(薬剤)
本症例に処方された製剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.ペグフィルグラスチムは、フィルグラスチムのバイオシミラー(バイオ後続品)である。
2.ラムシルマブ注射液は、凍結を避けて冷蔵保存する。
3.ペグフィルグラスチムは、メトキシポリエチレングリコール分子で修飾されていることにより、好中球及びその前駆細胞へ能動的ターゲティングされる。
4.ドセタキセル注射液には、アルコールによる過敏性反応を低減するためにポリソルベート80が添加されている。
5.ペグフィルグラスチムは、フィルグラスチムに比べてプロテアーゼによる分解を受けにくい。
1.「×」バイオシミラー(バイオ後続品)とは、先行のバイオ医薬品の特許が切れた後に、発売されるバイオ医薬品の後発薬のことです。(バイオ医薬品:タンパク質由来の医薬品(抗体製剤・インスリン製剤)のことです。)
2.「〇」ラムシルマブ(サイラムザⓇ)の貯法は、凍結を避けて冷蔵(2~8℃)で保存します。
3.「×」ペグフィルグラスチムは、メトキシポリエチレングリコール分子で修飾され、血中半減期が延長しているので、受動的ターゲティング製剤です。
受動的ターゲティング:物理化学的性質(高分子化など)を利用して、標的部位の薬物濃度を高める方法。
能動的ターゲティング:薬剤に抗体など付加して、標的組織へ積極的に薬物を届ける方法。
4.「×」ポリソルベート80は、非イオン性の界面活性剤で、注射剤の有効成分が、難溶性薬剤の場合、可溶化を目的として用いられます。
5.「〇」ペグフィルグラスチム(ジーラスタⓇ)は、フィルグラスチム(グランⓇ)の血中半減期を延長する目的で、フィルグラスチム(グランⓇ)にPEG(ポリエチレングリコール)を結合させた製剤です。
タンパク質にPEGを結合させることにより、プロテアーゼによる加水分解を遅延させ、血中半減期が延長します。