第108回 薬剤師国家試験問題 問153(統合失調症問題) | リベラルアーツ!! 健康・社会保険・労働に関すること

第108回 薬剤師国家試験問題 問153(統合失調症問題)

第108回 薬剤師国家試験
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問153(薬理)

統合失調症治療薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
 

1.ハロペリドールは、中脳辺縁系におけるドパミンD2受容体を遮断することで、統合失調症の陽性症状を改善する。

 

2.アリピプラゾールは、黒質線条体ドパミン神経系を抑制することで、統合失調症の陰性症状を改善する。

 

3.オランザピンは、セロトニン5-HT2A受容体を刺激することで、体重増加を起こす。

 

4.ペロスピロンは、セロトニン5-HT1A受容体を遮断することで、抗不安作用を示す。

 

5.クロルプロマジンは、ヒスタミンH1受容体およびアドレナリンα受容体を遮断することで、鎮静作用を示す。
 
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問153の解説
1.「〇」ハロペリドール(セレネース®):定型抗精神病薬(ブチロフェノン系)
ハロペリドールは、ドパミンD2受容体遮断作用・ヒスタミンH1受容体遮断作用・抗コリン作用・アドレナリンα受容体遮断作用が知られています。
(ドパミンD2受容体遮断効果:ハロペリドール > クロルプロマジン)

 

2.「×」アリピプラゾール(エビリファイ®):ドパミン受容体部分アゴニスト(DSS)
アリピプラゾールは、ドパミンD2受容体に対しては、パーシャルアゴニストとして働き、脳内でドパミンが大量に放出されているときには抑制的に働き、ドパミンが少量しか放出されていないときには刺激する作用を示します。
セロトニン受容体に対しては、5-HT1A受容体部分アゴニスト作用と、5-HT2A受容体アンタゴニスト作用を併せ持つ薬剤です。

 

3.「×」オランザピン(ジプレキサ®):多元受容体標的化抗精神病薬(MARTA)

オランザピンは、ドパミンD2受容体、セロトニン5-HT2受容体、アドレナリンα受容体、ヒスタミンH1受容体、ムスカリン受容体の遮断薬として働き、統合失調症の陽性症状と陰性症状の改善作用があります。

また、オランザピンでの食欲亢進は、セロトニン(5-HT2C)やヒスタミン(H1)受容体の遮断作用・摂食調節ペプチドのグレリンとの関連が考えられています。

 

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4.「×」ペロスピロン(ルーラン®):セロトニン・ドパミンアンタゴニスト(SDA)
ペロスピロンは、ドパミンD2受容体・セロトニン5-HT2A受容体遮断薬です。
D2受容体遮断作用により統合失調症の陽性症状を改善し、5-HT2A 受容体遮断作用により統合失調症の陰性症状を改善すると考えられています。
(※タンドスピロン(セディール®)は、5-HT1A受容体を刺激して、抗不安作用を示します。)

 

5.「〇」クロルプロマジン(コントミン®・ウインタミン®):定型抗精神病薬(フェノチアジン系)
クロルプロマジンは、ドパミンD2受容体遮断作用・ヒスタミンH1受容体遮断作用・抗コリン作用・アドレナリンα受容体遮断作用が知られています。
(H1受容体遮断・抗コリン・α受容体遮断効果:クロルプロマジン > ハロペリドール)
問153の解答:1と5
統合失調症の病態
中脳辺縁系:ドパミンの過剰⇒陽性症状が起こる

中脳皮質系:ドパミン神経機能低下⇒陰性症状が起こる

定型抗精神病薬

作用機序:D2遮断⇒陽性症状の改善

アドレナリンα・ヒスタミンH1遮断⇒鎮静作用・催眠作用

ムスカリンM遮断(抗コリン)⇒口渇・尿閉・便秘

副作用:錐体外路症状

クロルプロマジン(コントミン®):鎮静作用が強いハロペリドール(セレネース®):幻覚・妄想・興奮を強力に抑える

スルピリド(ドグマチール®):作用はマイルド

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非定型抗精神病薬①:セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA)

中脳辺縁系:D2遮断⇒陽性症状改善

中脳皮質系:5-HT2A遮断⇒低下したドパミン分泌を促進し陰性症状を改善

副作用:体重増加・糖代謝異常・脂質代謝異常

リスペリドン(リスパダール®):錐体外路症状の副作用が少ない

パリペリドン(インヴェガ®):徐放錠のため、持続時間が長い

ペロスピロン(ルーラン®

ブロナンセリン(ロナセン®):鎮静作用は弱い

ルラシドン(ラツーダ®):5HT1部分作動による抗不安・抑うつ改善効果

非定型抗精神病薬②:ドパミン・システム・スタビライザー(DSS)

中脳辺縁系:D2遮断⇒陽性症状改善

中脳皮質系:低下したドパミン分泌に対しドパミン受容体を刺激⇒陰性症状を改善

アリピプラゾール(エビリファイ®):錐体外路症状の副作用が少ない

ブレクスピラゾール(レキサルティ®):錐体外路症状の副作用が少ない

非定型抗精神病薬③:多元受容体標的化抗精神病薬(MARTA)

作用機序:D2・5-HT2A・5-HT2c・α・H1・M・M3遮断

オランザピン(ジプレキサ®):鎮静作用が強い・陰性症状にも有効・体重増加・血糖上昇

セロクエル(クエチアピン®):鎮静作用が強い・陰性症状にも有効・体重増加・血糖上昇

アセナピン(シクレスト®):舌下錠で苦味や舌のしびれがある

クロザピン(クロザリル®):治療抵抗性で入院下で開始・血液障害・血糖上昇

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