問236-237
1歳6ヶ月男児。身長75cm、体重10kg。
1歳半健診で極度の下肢の変形を指摘され、医療機関を受診した。
男児に既往歴はなく、出生は妊娠39週20日、自然分娩で、身長50cm、出生体重3,010g、頭囲34cmであった。
出生後は完全母乳栄養で、現在は母乳に加え離乳食を1日3回摂取しているが、1回の摂取量は平均的な摂取量の半分程度であった。
来院時の検査値及び所見は以下のとおりであり、医師が治療薬について薬剤師に相談した。
(検査値及び所見)
血清25-ヒドロキシビタミンD 8ng/mL(20ng/mL以下は不足)
補正血清カルシウム8.0mg/dL(基準値9.4~10.8mg/dL)
血清リン5.3mg/dL(基準値4.5~6.2mg/dL)
血清ALP2,039IU/L(基準値395~1,339IU/L)
血中副甲状腺ホルモン(intact‐PTH)549pg/mL(基準値10~65pg/mL)
単純X線像で内反膝(O脚)、骨幹端の杯状陥凹あり。
問236(実務)
この患児に対する治療薬として適切なのはどれか。2つ選べ。
1.グルコン酸カルシウム注射液
2.炭酸水素ナトリウム注射液
3.チアミン塩化物塩酸塩注射液
4.アルファカルシドール内用液
5.レボカルニチン内用液
問236の解説
設問の完全母乳栄養で、離乳食が平均的な摂取量の半分程度から、VD・VK・鉄分が不足するかもと考えます。(母乳で不足しがちな栄養素は、VD・VK・鉄分)
そして、検査値及び所見で、VD・Caの不足、ALP・副甲状腺ホルモン※の高値、O脚・骨幹端の杯状陥凹から、くる病を疑います。
くる病(成人なら骨軟化症)とは、VD・Ca・Pが不足し、骨の強度が不足する病気です。
※VDが不足すると、血中Ca濃度を維持するため、副甲状腺ホルモンが増加します。
1.「〇」グルコン酸カルシウム注(カルチコールⓇ):カルシウム製剤
2.「×」炭酸水素ナトリウム注:アシドーシス改善薬
3.「×」チアミン注(メタボリンⓇ):ビタミンB1製剤
4.「〇」アルファカルシドール(アルファロールⓇ):1α-OHビタミンD3製剤
5.「×」レボカルニチン(エルカルチンⓇ):カルニチン製剤
問236の解答:1と4
問237(衛生)
この患児が罹患した疾病には、食事や生活習慣が関係する。
一般的に、この疾病に乳幼児が罹患するのを予防するために有効な方法として正しいのはどれか。2つ選べ。
1.妊娠中に葉酸を摂取する。
2.乳幼児に卵や牛乳の摂取を避けさせる。
3.乳幼児に適度な日照を受けさせる。
4.出生直後及び生後1週間以内の新生児にビタミンK2シロップを飲ませる。
5.乳幼児に魚類やキノコ類を摂取させる。
1.「×」妊娠中に葉酸を摂取する目的は、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを減らすためです。
神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄の元となる神経管が上手く閉じないために起こる障害のことです。
2.「×」Ca不足を予防するために、卵や牛乳の摂取は増やすべきです。
3.「〇」プロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール)から、紫外線(UVB)によって、VD3(コレカルシフェロール)が産生されるので、適度な日照は推奨されます。
4.「×」新生児へのVK2(ケイツーⓇ)シロップは、出血症やプロトロンビン血症の目的で使用されます。
5.「〇」魚類にはVD・Caが、キノコ類にはVDが多いので摂取した方がよいです。