問232-233
22歳女性。身長160cm、体重63kg。
女性は肥満と体脂肪率が高いことを気にしており、糖質制限ダイエットによる摂取エネルギー制限が肥満予防に有用であると考えていた。
インターネットや書籍の情報を基に糖質制限ダイエットを始めたが、過度の糖質制限は体に良くないと友人から聞き、不安になって近所の薬局を訪れて薬剤師に相談した。
問232(実務)
薬剤師は女性に対し、糖質制限の問題点を説明した上で、食生活の改善と適度な運動を勧め、同時に特定保健用食品を試してみることを提案した。
薬剤師が女性に提案した特定保健用食品の成分として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1.大豆イソフラボン
2.キシリトール
3.カゼインホスホペプチド(CPP)
4.茶カテキン
5.ラクトトリペプチド
問232の解説
1.「×」大豆イソフラボン:分子構造がエストロゲン(女性ホルモン)に似ているため、エストロゲンに似た作用を期待します。
2.「×」キシリトール:天然の甘味料で、虫歯予防を期待します。
3.「×」カゼインホスホペプチド(CPP):カルシウムの吸収を促進することを期待します。
4.「〇」設問の女性は、肥満と体脂肪率が高いことを気にしているので、選択肢の中では茶カテキンを提案します。
茶カテキン:体脂肪低減作用・抗酸化作用・殺菌作用・抗ガン作用・血圧降下作用・血糖上昇抑制作用・口臭予防などを期待します。
5.「×」ラクトトリペプチド:血圧降下作用・血管内皮機能改善・血管柔軟性の改善を期待します。
問232の解答:4
問233(衛生)
この女性の相談をきっかけに、薬局が開催する地域住民向け健康セミナーで糖質制限のことを取り上げることになり、薬局内で勉強会を行った。
糖質制限が糖質、タンパク質及び脂質の代謝に及ぼす影響に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.糖質制限を行うと、膵臓からインスリン分泌が亢進する。
2.糖質の摂取不足により血中グルコース濃度の低下が起こると、アミノ酸、乳酸、グリセロールのいずれからもグルコースが作られる。
3.糖質制限が続くと、肝臓で遊離脂肪酸のβ-酸化が亢進し、大量に生成したアセチルCoAからケトン体が産生される。
4.肝臓のグリコーゲンは、糖質制限状態ではエネルギー源としては利用されない。
5.脳や神経系の細胞は、グルコースを細胞内に貯蔵しているため、糖質制限の影響を受けにくい。
1.「×」糖質制限を行うと、血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌が促進され、血糖値を低下させるインスリン分泌は低下すると考えられます。
2.「〇」糖の摂取不足により血中グルコース濃度が低下すると、糖新生が促進されます。
糖新生の材料として、乳酸・ピルビン酸・糖原性アミノ酸(アラニンなど)・プロピオン酸・グリセロールなどが使われます。
3.「〇」糖質制限が続くと、エネルギーを産生するために、肝臓の脂肪細胞から遊離脂肪酸が遊離して、β-酸化が亢進され、大量のアセチルCoAからケトン体(アセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトン)が産生されます。ケトン体が増え過ぎると、血液が酸性に傾きアシドーシスとなります。
4.「×」糖質が不足すると、肝臓に蓄えているグリコーゲンを分解し、エネルギー源として、空腹時の血糖維持のために利用します。
5.「×」脳や神経系の細胞は、グルコースをほとんど貯蔵できないので、糖質制限の影響を受けやすい。