問228-229
70歳男性。体重65kg。
ループス腎炎と脳梗塞に対して、それぞれタクロリムスカプセルとワルファリン錠を服用していた。
2週間前から微熱、咳、痰、寝汗などが続き、昨日、痰に血が混じっていたため、不安を感じて病院を受診した。
胸部CT検査で両側に空洞化を伴う多発性浸潤陰影を認め、喀痰の塗抹検査で病原体が検出されたため、入院し、直接服薬確認療法(DOTS)が行われることとなった。
(入院時の検査値)
AST 26IU/L、ALT 27IU/L、血清クレアチニン 1.8mg/dL、血清アルブミン 3.6g/dL、総ビリルビン0.7mg/dL
問229(実務)
主治医より、イソニアジド錠、リファンピシンカプセル、エタンブトール錠、ピラジナミド錠の4剤でDOTSを開始することが薬剤師に伝えられた。
薬剤の服用にあたり、薬剤師が主治医に伝えるべき内容として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.肝機能障害があるため、イソニアジドの使用を避けるべきである。
2.ワルファリンの作用が減弱することがある。
3.視神経障害が現われることがあるため、定期的に視力等を確認する必要がある。
4.腎機能障害があるため、エタンブトールを他剤に変更すべきである。
5.タクロリムスの血中濃度が上昇することがある。
問229の解説
1.「×」入院時の検査値AST 26IU/L(基準値:7~38 IU/L)、ALT 27IU/L(基準値:4~44 IU/L)より、肝機能障害は認められない。
イソニアジド(イスコチンⓇ):副作用に肝障害が有名な抗結核薬
2.「〇」リファンピシン(リファジンⓇ)は、肝薬物代謝酵素CYP(主にCYP3A4)を誘導します。
ワルファリン(ワーファリンⓇ)は、肝代謝(主はCYP2C9で、CYP1A2、CYP3A4も関与)薬物のため、併用すると、ワルファリンの作用が減弱することが考えられます。
3.「〇」エタンブトール(エサンブトールⓇ・エブトールⓇ)は、副作用として視力障害(視神経炎)が現れやすい薬剤なので、定期的に、視力検査等を行います。
4.「×」エタンブトール(エサンブトールⓇ・エブトールⓇ)は、腎機能の低下した患者・糖尿病患者などでは、視力障害などの副作用が発現しやすい傾向にあるが、患者の状態を観察しながら慎重に投与すれば、他剤に変更しなくてもよい。
※クレアチニンは、筋肉に含まれているタンパク質の老廃物で、腎臓の糸球体でろ過され尿中に排泄されます。腎臓の機能が低下すると尿中に排泄される量が減少し、血液中にクレアチニンが溜まります。
血清クレアチニンの正常値は、男性1.2mg/dL以下、女性1.0mg/dL以下です。
5.「×」リファンピシン(リファジンⓇ)は、肝薬物代謝酵素CYP(主にCYP3A4)を誘導します。
タクロリムス(プログラフⓇ)は、肝代謝(CYP3A4・CYP3A5)薬物のため、併用すると、タクロリムスの血中濃度が低下することが考えられます。
問229の解答:2と3