問118
細菌の抗菌薬耐性化には種々の遺伝子もしくはその産物が関わっている。
次の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.グラム陰性菌の外膜にあるポーリンの増加は、カルバペネム系抗菌薬への耐性化を促す。
2.腸球菌のバンコマイシン耐性遺伝子VanAの産物は、細胞壁のペプチドグリカン合成の代替経路で働き、グリコペプチド系抗菌薬の作用を回避する。
3.リファンピシン耐性菌では、DNAポリメラーゼ遺伝子の変異により、耐性が獲得されている。
4.カナマイシン耐性遺伝子産物の中には、抗菌薬をリン酸化する酵素として働き、RNAポリメラーゼへの結合を消失させるものがある。
5.Rプラスミドなどの伝達性因子を介して薬物排出タンパク質が過剰発現することは、多剤耐性化の一因となる。
1.「×」グラム陰性菌の外膜にあるポーリンは、外界の栄養素(糖・イオン・アミノ酸)を細菌内に取込むチャネルとして働いているが、抗菌薬も取り込んでしまうため、ポーリンの減少が、カルバペネム系抗菌薬への耐性化を促します。
2.「〇」バンコマイシンは、細胞壁合成(D-アラニル-D-アラニン)阻害のグリコペプチド系抗生物質。
バンコマイシン耐性遺伝子VanAの産物は、細胞壁のペプチドグリカン合成の代替経路で働き(D-アラニンをD-乳酸に置換)、グリコペプチド系抗菌薬の作用を回避します。
3.「×」リファンピシンは、細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼに作用し、RNA合成を阻害することにより抗菌作用を示します。
リファンピシン耐性菌では、RNAポリメラーゼ遺伝子の変異により、耐性が獲得されています。
4.「×」カナマイシンは、細菌のリボソーム30Sに結合し、タンパク質合成を阻害することにより、抗菌作用を示します。
カナマイシン耐性遺伝子産物の中には、抗菌薬をリン酸化する酵素として働き、リボソームへの結合を消失させるものがあります。
アミノグリコシド系抗生物質の耐性機構として、以下の3つがあります。
①アセチル基転移酵素による耐性機構
②ヌクレオチド転移酵素による耐性機構
③リン酸転移酵素による耐性機構
5.「〇」プラスミドには、薬剤に対して耐性を示すタンパク質の遺伝子を持つRプラスミドがあり、伝達性因子を介して薬物排出タンパク質が発現すると、多剤耐性化の一因となります。