問166(薬理)
A〜Cの構造を有する薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.薬物Aは、30Sリボソームサブユニットに作用することで、タンパク質合成を阻害する。
2.薬物Bは、ペニシリン結合タンパク質のトランスペプチダーゼを活性化することで、細胞壁合成を抑制する。
3.薬物Cは、DNAジャイレースを阻害することで、DNAの複製を阻害する。
4.薬物AとCは、薬物不活性化酵素の誘導によりアセチル化やリン酸化を受けることで、抗菌活性が減弱する。
5.薬物Bは、細菌が産生するβ₋ラクタマーゼにより開裂することで、抗菌活性が減弱する。
問166の解説
1.「〇」薬物A:テトラサイクリン(アクロマイシン®)
テトラサイクリン系抗生物質は、細菌のリボゾーム30Sに結合し、タンパク質合成を阻害し抗菌作用を発揮します。
2.「×」薬物B: ベンジルペニシリン(ペニシリンG®)
ペニシリン系抗生物質(β‐ラクタム系抗生物質)は、細菌の細胞壁合成酵素である、トランスペプチダーゼ(PBP)と結合し、細菌の細胞壁(ペプチドグリカン)合成を阻害して、抗菌作用を発揮します。
3.「×」薬物C: エリスロマイシン(エリスロシン®)
マクロライド系抗生物質は、細菌のリボゾーム50Sに結合し、タンパク質合成を阻害し抗菌作用を発揮します。
4.「×」薬物不活性化酵素の誘導によりアセチル化やリン酸化を受けることで、抗菌活性が減弱するのは、アミノグリコシド系抗生物質が知られています。
アミノグリコシド系抗生物質の耐性化機序として、①修飾酵素による薬剤の不活性化(アセチル基転移酵素による耐性化・ヌクレオチド転移酵素による耐性化・リン酸転移酵素による耐性化)、②排出ポンプによる薬剤の細胞外への排出、③細胞膜構造の変化による薬剤透過性の低下、④リボソーム30Sの点変異もしくはメチル化による薬剤作用点の構造変化によるものがあります。
5.「〇」ペニシリン系抗生物質は、細菌が産生するβ-ラクタマーゼによって、β‐ラクタム環が加水分解(開裂する)されることにより、抗菌活性が減弱します。
問166の解答:1と5
抗生物質のまとめ
ターゲットポイント | 系統 | 作用機序 |
細胞壁 合成阻害 |
βーラクタム | 細胞壁合成酵素トランスペプチダーゼ(PBP) |
グリコペプチド | 細胞壁のペプチドグリカン | |
ホスホマイシン | 細胞壁(ぺプチドグリカン)の合成酵素( UDP-GlcNAcエノールピルビン酸トランスフェラーゼ) | |
タンパク質 合成阻害 |
アミノグリコシド | 30S・50Sリボソーム (ストレプトマイシンは、30S) |
テトラサイクリン | 30Sリボソーム | |
マクロライド | 50Sリボソーム | |
リンコマイシン | ||
クロラムフェニコール | ||
核酸合成阻害 | ニューキノロン | DNAジャイレース(トポイソメラーゼⅡ・Ⅳ) |
参考資料
2023.7.24時点の記事