第109回 薬剤師国家試験問題 問292-293(生活習慣病) | 積小為大!!  健康・社会保険・労働に関すること

第109回 薬剤師国家試験問題 問292-293(生活習慣病)

薬理・病態
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65歳男性。高血圧症と高尿酸血症の治療中で、以下の処方薬を服用している。

 

 

(処方)

シルニジピン錠20mg   1回1錠(1日1錠)

フェブキソスタット錠40mg   1回1錠(1日1錠)

1日1回   朝食後

 

 

最近血圧が高い日が続き、かかりつけ医より患者情報の共有とともに降圧薬の追加について薬剤師に相談があった。

医師から得た検査値と患者情報は以下のとおり。

 

 

(検査値)

血圧 170/100mmHg、心拍 70拍/分、空腹時血糖 110mg/dL、HbA₁c 6.2%、総コレステロール 190mg/dL、TG(トリグリセリド) 100mg/dL、HDL-C 60mg/dL、LDL-C 110mg/dL、eGFR 82mL/min/1.73m2、K 3.3mEq/L、尿酸値 5.8mg/dL

 

 

(患者情報)

・最近よく足がつるので、ドラッグストアで芍薬甘草湯を購入し毎日服用している。

・芍薬甘草湯を服用するようになってから四肢の痛み、だるさを自覚している。

・気管支ぜん息の既往歴あり。現在は服薬なし。

・飲酒:ビール 1,000mL/日  喫煙:20本/日

問292(病態・薬物治療)

この患者の病態と治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

 

1.偽アルドステロン症が生じている可能性がある。

 

2.高尿酸血症は、腎機能低下による可能性が高い。

 

3.降圧目標は、診察室血圧で140/90mmHg未満である。

 

4.尿酸値は、治療目標値に達している。

 

5.脂質異常症が認められるので、その治療も行う必要がある。

 

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問292の解説

シルニジピン(アテレック):Ca拮抗薬(L・N型)

(※L型:血管平滑筋 ・ N型:交感神経終末 ・ T型:心臓)

 

フェブキソスタット(フェブリク):キサンチンオキシダーゼ阻害薬

キサンチンオキシダーゼ阻害作用により、尿酸産生を抑制します。

 

 

1.「〇」設問より、芍薬甘草湯を服用するようになってから四肢の痛み、だるさを自覚しているとあり、検査値の K 3.3mEq/L(正常値:3.5〜5.0mEq/L)なので、偽アルドステロン症を疑います。

 

偽アルドステロン症は、低レニン性の高血圧・低カリウム血症が特徴で、芍薬甘草湯に含まれる甘草(グリチルリチン酸)が、コルチゾールを不活性化する、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSD)2を阻害することにより、過剰となったコルチゾールがミネラルコルチコイド受容体に作用するためにおこります。

 

 

2.「×」検査値より、eGFR 82mL/min/1.73m2(正常値:60mL/min/1.73m2以上)とあるので、65歳なら腎機能は良いと考えます。

 

 

3.「×」降圧目標値として

75歳未満の診察室血圧:130/80mmHg未満

75歳以上の診察室血圧:140/90mmHg未満なので

設問の65歳は、130/80mmHg未満を降圧目標値とします。

 

 

4.「〇」検査値より、尿酸値 5.8mg/dL(治療目標値:6.0mg/dL以下・正常値:7.0mg/dL以下・治療開始:8.0mg/dL以上)とあるので、治療目標値に達しています。

 

 

5.「×」検査値より、総コレステロール 190mg/dL(正常値:120~220mg/dL)、

TG(トリグリセリド) 100mg/dL(正常値:150mg/dL未満)、

HDL-C 60mg/dL(正常値:40mg/dL以上)、

LDL-C 110mg/dL(正常値:140mg/dL未満)とあるので、

脂質異常症に関して、治療は必要ありません。

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問293(実務)

この患者に追加する降圧薬のうち、適しているのはどれか。2つ選べ。

 

1.アムロジピン

 

2.アジルサルタン

 

3.トリクロルメチアジド

 

4.エサキセレノン

 

5.カルベジロール

 

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問293の解説

1.「×」アムロジピン(アムロジン・ノルバスク):Ca拮抗薬(L型)

設問の患者は、Ca拮抗薬(L・N型)のシルニジピン(アテレック)を服用しているので、違う系統で降圧作用のある薬を選びます。(※L型:血管平滑筋 ・ N型:交感神経終末 ・ T型:心臓)

 

 

2.「〇」アジルサルタン(アジルバ):アンジオテンシンⅡタイプ1(AT1)受容体遮断薬(ARB)

 

 

3.「×」トリクロルメチアジド(フルイトラン):チアジド系利尿薬

遠位尿細管に存在するNa+-Cl共輸送体を阻害することにより、Na+の再吸収が阻害されるため、利尿効果を示します。

また、遠位尿細管内でのNa+の再吸収阻害作用により、集合管でのNa+-K+交換系が亢進するので、尿中へのK+排泄が増加します。

設問の患者は、偽アルドステロン症により、K値が減少(K 3.3mEq/L:正常値:3.5〜5.0mEq/L)しているので、追加する降圧薬として不適です。

 

 

4.「〇」エサキセレノン(ミネブロ):ミネラルコルチコイド受容体遮断薬

エサキセレノンは、アルドステロンが、ミネラルコルチコイド受容体に結合することを阻害するので、Na+と水の再吸収が阻害され、降圧効果を示します。

また、エサキセレノンは、抗アルドステロン作用によるK保持作用があります。

設問の患者は、偽アルドステロン症により、K値が減少(K 3.3mEq/L:正常値:3.5〜5.0mEq/L)しているので、追加する降圧薬として適しています。

 

 

5.「×」カルベジロール(アーチスト):αβ遮断薬

カルベジロールは、β遮断作用があるため、気管支喘息のある患者には禁忌です。

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