問165-166(薬理/病態・薬物治療)
50歳女性。 5年前に近医にて高血圧を指摘され、アムロジピン5mg/日を服用していた。
最近の血圧は155/95 mmHg程度と高値が持続しており、頭痛や脱力を自覚し今回受診した。
二次性高血圧が疑われたため、腹部CT検査が実施されて左副腎に腫瘍を認めたが、血中コルチゾール値や血中カテコールアミン値の上昇は認めなかった。
問165(薬理)
この患者にスピロノラクトンが投与されることになった。
スピロノラクトンに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.上皮性Na+チャネルの発現を増加させる。
2.アルドステロン誘導タンパク質の生合成を抑制する。
3.腎尿細管におけるNa+, K+-ATPaseの発現を増加させる。
4.腎尿細管におけるK+分泌を促進する。
5.抗アンドロゲン作用を示す。
問165の解説
1.「×」
2.「〇」スピロノラクトンの構造がアンドロゲン(男性ホルモン)やプロゲステロン(女性ホルモン)と似ているため、女性では月経不順や多毛、男性では女性化乳房が知られており、この副作用が、アルドステロン誘導タンパク質の生合成抑制となります。
3.「×」
4.「×」
5.「〇」スピロノラクトン(アルダクトンⓇ)は、遠位尿細管のアルドステロン受容体で、アルドステロンと拮抗することにより、Na+-K+交換を抑制するので、Na+と水の排泄を促進し、K+の排泄を抑制します。
問165の解答:2と5
問166(病態・薬物治療)
本症例で認められる血液検査所見として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.カリウム低値
2.カルシウム高値
3.LDLコレステロール高値
4.遊離チロキシン(FT4)高値
5.レニン活性低値
問166の解説
設問より、CT検査で副腎に腫瘍が認められるが、血中コルチゾールやカテコールアミンの上昇が認められないより、アルドステロン症を疑って問題を解いていきます。
(※副腎皮質の腫瘍+コルチゾールが過剰分泌されていたら、クッシング症候群を、副腎髄質の腫瘍+カテコールアミンが過剰分泌されていたら、褐色細胞腫を疑います)
1.「〇」アルドステロン症は、副腎からアルドステロンが過剰分泌されている疾患なので、アルドステロンの作用により、Na+と水の再吸収が促進され、K+の排泄が促進されます。
2.「×」
3.「×」
4.「×」
5.「〇」本来、血圧が下がると腎臓からレニンが分泌されて、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が活性化され、血圧が上昇しますが、アルドステロン症は、アルドステロンが過剰分泌されているため、フィードバック作用により、レニン活性の低値が認められます。
問166の解答:1と5