問288-289(病態・薬物治療/薬理)
42歳女性。半年前に両側手指関節及び両側膝関節の痛みを自覚し病院を受診した。
検査の結果、関節リウマチと診断され、処方1による治療を受けていた。
症状のコントロールが不十分だったためメトトレキサートが漸増されたが、
多発性関節炎は持続した。
最近では仕事にも支障をきたすようになったため、治療方針が変更されることになった。
この患者は小児期に水痘に罹患した既往がある。
(検査値)
CRP 5.0 mg/dL、リウマトイド因子陽性、抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)陽性、抗核抗体陰性、AST 25IU/L、ALT 15IU/L、eGFR 80mL/min/1.73m2
(処方1)
メトトレキサートカプセル2mg 1回1カプセル(1日2カプセル)
毎週 日曜日 1日2回 9時、21時 4日分(投与実日数)
メトトレキサートカプセル2mg 1回1カプセル(1日2カプセル)
毎週 月曜日 1日1回 9時 4 日分(投与実日数)
問288(病態・薬物治療)
この患者に追加する治療薬として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.エリスロマイシン
2.トファシチニブ
3.免疫グロブリン製剤
4.コルヒチン
5.アダリムマブ
問288の解説
メトトレキサート(リウマトレックスⓇ):葉酸代謝拮抗薬
関節リウマチ患者の、関節の中では、リンパ球などの炎症細胞が、活発に活動や増殖をしています。
葉酸は細胞増殖に必要なビタミンで、葉酸代謝拮抗薬のメトトレキサートを服用することにより、リンパ球の増殖や、炎症部位への好中球の遊走などが抑制されるので、抗リウマチ作用を示します。
1.「×」エリスロマイシン(エリスロシンⓇ):マクロライド系抗生物質
50Sリボソームと結合して、細菌のタンパク質合成阻害
2.「〇」トファシチニブ(ゼルヤンツⓇ):JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬
トファシチニブ(ゼルヤンツⓇ)が、JAKと結合することによって、シグナル伝達(JAK Pathway)が阻害され、炎症性サイトカイン(IL-6など)の産生が抑制されます。
リンパ球の活性化や増殖には、炎症性サイトカインが必要で、JAK Pathwayが阻害されると、免疫(炎症)反応が抑制されるため、関節リウマチの治療に用いられます。
3.「×」免疫グロブリン(抗体)製剤は、ステロイドの効果が不十分なときや、無又は低ガンマグロブリン血症などに用いられます。
4.「×」コルヒチンは、チューブリン(微小管タンパク)に結合して、好中球・マクロファージが炎症部位に遊走することを阻害します。それにより、尿酸結晶の貪食により惹起される炎症反応を抑制します。
5.「〇」アダリムマブ(ヒュミラⓇ):抗TNF-αモノクローナル抗体
TNF-αは、炎症性サイトカインの1種で、関節リウマチ患者の滑膜液に過剰発現し、関節の炎症や破壊に関与しています。
アダリムマブ(ヒュミラⓇ)は、TNF-αと結合することによって、炎症反応を抑制するので、関節リウマチの治療に用いられます。
問288の解答:2と5
問289(実務)
治療方針が変更されて2週間後、患者が来院し、診察前の薬剤師との面談で
「左腰部から背部に沿ってかゆみがあって、昨日から痛み出した」と訴えた。
薬剤師は、患者情報を収集して副作用を疑い、医師へ情報提供を行った。
医師は診察後バラシクロビルを処方した。
薬剤師が副作用を疑うきっかけになった患者情報はどれか。2つ選べ。
1.メトトレキサートの服用状況
2.追加した治療薬の処方内容
3.年齢と性別
4.水痘ワクチンの接種歴
5.肝機能、腎機能
問289の解説
小児期に水痘に罹患した既往歴があれば、水痘・帯状疱疹ウイルスが神経節に潜伏していることが考えられます。
1.「〇」メトトレキサート・トファシチニブ・アダリムマブは、免疫抑制作用のある薬剤なので、神経節に潜伏していた、水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化したことが考えられます。
2.「〇」左腰部から背部に沿っての痒み・痛みは、帯状疱疹の特徴である、神経に沿って広がり、多くは片側に発症することとも一致します。
3.「×」
4.「×」
5.「×」
問289の解答:1と2