問159(薬理)
心不全の治療に用いられる薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.ジゴキシンは、Na+, K+-ATPase を活性化し、心筋細胞内 Ca2+ 濃度を上昇させて、強心作用を示す。
2.ピモベンダンは、サイクリックAMP(cAMP)誘導体で、細胞内でcAMPに変換されて、強心作用を示す。
3.ビソプロロールは、アドレナリンβ1受容体を遮断し、心臓のリモデリングを抑制する。
4.カルペリチドは、生体内で活性体となり、ナトリウム利尿ペプチドの分解を阻害して、血管拡張作用と利尿作用を示す。
5.イバブラジンは、過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル(HCNチャネル)を遮断して、心拍数を減少させる。
問159の解説
1.「×」ジゴキシン(ジゴシンⓇ)は、Na+, K+-ATPaseを阻害し、心筋細胞内 Ca2+ 濃度を上昇させ、強心作用を示します。
2.「×」心筋の収縮は、筋原線維に存在するトロポニンCと、筋小胞体から放出されたCa2+が結合しておこりますが、ピモベンダンは、Ca2+に対するトロポニンCの感受性を高め、心筋収縮力を増強します。
また、PDEⅢ(ホスホジエステラーゼⅢ)阻害作用もあるので、cAMPから5’-AMPへの分解を阻害するので、cAMP濃度が高くなり、PKA(プロテインキナーゼA)が活性化して、心筋細胞内のCa2+濃度が上昇し、心筋収縮力を増強します。
(※サイクリックAMP(cAMP)誘導体で、細胞内でcAMPに変換されて、強心作用を示すのは、ブクラデシン(アクトシンⓇ)です。)
3.「〇」ビソプロロール(メインテートⓇ)は、アドレナリンβ1受容体遮断薬で、心臓のリモデリングを抑制します。(※心臓のリモデリングとは、心筋細胞の肥大や線維化のこと)
4.「×」カルペリチド(ハンプⓇ)は、心房性Na利尿ポリペプチドで、グアニル酸シクラーゼを活性化させ、細胞内のcGMPを増加させるので、血管拡張作用・利尿作用により心不全治療に用います。
5.「〇」イバブラジン(コラランⓇ)は、心臓の洞結節にあるHCN(過分極活性化環状ヌクレオチド依存性)4チャネル遮断薬で、血圧に影響せず、心拍数のみを減少させます。
問159の解答:3と5