問340
20歳男性。中学生の頃から夜間不眠かつ日中強烈な眠気を自覚するようになった。
高校2年になり、自分の意志で制御出来ない眠気に襲われるようになり、就寝後は最長2時間の睡眠と5~10回の夜間覚醒を繰り返し、起床時の疲れと頭痛、日中の脱力発作、突然の睡眠発作や自転車の居眠り運転が日常となった。
生活の維持が困難となり、20歳になって近隣の精神神経科病院を受診した。
専門医による診察と検査の結果、ナルコレプシーと診断され、処方1及び2で治療を開始したが、3ヶ月経過しても症状が改善されないため、今回処方1が処方3に変更された。
(処方1)
モダフィニル錠100mg
1回 3錠(1日3錠) 1日1回 朝食後 14日分
(処方2)
クロミプラミン塩酸塩錠25mg
1回1錠(1日1錠) 1日 1回 就寝前 14日分
(処方3)
メチルフェニデート塩酸塩錠10mg
1回 1錠(1日2錠) 1日2回 朝食後就寝前 14日分
変更後の処方箋を受け取った薬局薬剤師の対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.処方医・医療機関が処方3の薬剤の流通管理システムに登録済であることを確認する。
2.処方3の薬剤の流通管理システムは薬剤費の抑制を目的としている。
3.処方2の用法について就寝前ではなく朝ではないかと処方医に問い合わせる。
4.処方3の用法について朝食後就寝前ではなく朝昼食後ではないかと処方医に問い合わせる。
5.返却された処方1の薬剤の残りを適切に廃棄・記録し、都道府県知事に届ける。
モダフィニル(モディオダールⓇ):覚醒促進作用
視床下部及びその近傍における神経細胞の活性化、GABAの遊離抑制作用
クロミプラミン(アナフラニールⓇ):3環系抗うつ薬
うつ病以外にも、うつ病の使用する用量よりも減量して、遺尿症やナルコレプシー(過眠症)に伴う情動脱力発作にも適用があります。
脳内のセロトニン・ノルアドレナリンの神経終末への取り込み阻害
メチルフェニデート(リタリンⓇ):中枢神経刺激薬
シナプス前終末で、ドパミン・ノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、神経系の興奮性を高める。
1.「〇」メチルフェニデートは、第1種向精神薬に分類されています。
薬物乱用防止のため、厳しい流通管理が義務づけられています。
そのため、メチルフェニデート(リタリンⓇ・コンサータⓇ)を調剤する際は、ADHD適正流通管理システムで、処方医・医療機関が登録済か確認する必要があります。
2.「×」流通管理システムは、薬物乱用防止を目的としています。
3.「×」クロミプラミンをナルコレプシーに伴う情動脱力発作で使用する場合、1日10~75mgを1日1~3回に分割して経口投与しますが、副作用で眠気、注意力・集中力・反射運動能力などの低下が起こることがあるので、1日1回なら就寝前でよいと考えます。
4.「〇」メチルフェニデートは、覚醒効果があるため、眠れなくなることがあります。
そのため、夕方以後の服用は原則避けます。
5.「×」モダフィニルは、第1種向精神薬に分類されています。
第1種向精神薬の廃棄は、焼却、酸やアルカリによる分解など、回収が困難な方法をとる必要がありますが、許可や届出の必要はありません。
(※患者に渡した第1種向精神薬が返却され破棄する場合は、記録の必要はありませんが、使用期限切れなどで廃棄する場合は、記録を2年間保存しなければなりません。)