第108回 薬剤師国家試験問題 問310-311(腎性貧血治療 問題) | リベラルアーツ!! 健康・社会保険・労働に関すること

第108回 薬剤師国家試験問題 問310-311(腎性貧血治療 問題)

第108回 薬剤師国家試験
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75歳男性。糖尿病及び糖尿病性腎症で在宅療養にて腹膜透析を行い、薬物治療中である。

今回、処方1及び処方2が追加された処方箋が発行された。

過去の薬歴から処方1及び処方2は初めて処方されたことがわかった。

薬剤師が、調剤した薬剤を持って患者宅を訪問した。

 

 

(処方1)

ダルベポエチン アルファ(遺伝子組換え)注射液30μgプラシリンジ

1回1本 皮下注射 2週間に1回 全2回分

※自己注射ではありません。

 

 

(処方2)

クエン酸第一鉄ナトリウム錠50mg

1回2錠(1日4錠) 1日2回 朝夕食後 28日分

 

 

(直近の検査値)

白血球 6,500/μL、赤血球 284×104/μL、Hb 8.6g/dL、Ht 26%、MCV 91,5fL、MCH 30.3pg、MCHC 33.1%、血小板 22.3×104/μL、eGFR 8.9mL/min/1.73m2、血清鉄 45μg/dL(基準値54~200μg/dL(男性))、血清ビタミンB12値と血清葉酸値は基準値内

問310(実務)

処方1、処方2の説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。

 

1.処方1の薬は常温で保存してください。

 

2.処方1の薬の副作用として血圧が上昇する場合があります。

 

3.処方2の薬は腎機能の悪化を予防するお薬です。

 

4.処方2の薬の使用中は、定期的にHb値を測定する必要があります。

 

5.Hb値にかかわらず、血清鉄値が基準値内に回復すれば、処方1の薬が中止になります。

 

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問310の解説

設問より、糖尿病性腎症で腹膜透析を行っていて、eGFR 8.9mL/min/1.73m2(基準値:90以上)、赤血球 284×104/μL(男性基準値:420~550×104)、Hb 8.6g/dL(男性基準値:13.5~18)、Ht 26%(男性基準値:40~50)とあるので、腎機能が低下して、腎性貧血を起こしていると推測できる。

 

腎機能が低下すると、腎臓で産生されるエリスロポエチンの産生も低下し、腎性貧血を起こします。(※腎臓から産生されたエリスロポエチンが、骨髄の造血幹細胞に作用して赤血球を作ります)

 

1.「×」ダルベポエチン(ネスプ)は、注射薬で冷所(2~8℃)保存です。

 

2.「〇」ダルベポエチンは、造血幹細胞に作用し、赤血球の産生を促進させるため、血圧が上昇します。

 

3.「×」設問より、血清鉄 45μg/dL(基準値54~200μg/dL(男性))とあるので、鉄が不足している。

ダルベポエチンが、造血幹細胞に作用して赤血球の産生を増やすためには、赤血球の材料である鉄が必要。そのため、血清鉄が不足している症例では、処方2のように鉄剤を併用します。

 

4.「〇」鉄剤を服用している際は、適宜、血液検査を行い、過剰摂取とならないよう注意します。

(※体内の鉄が過剰になると肝臓などに蓄積し肝障害となります。)

 

5.「×」ダルベポエチンを中止するタイミングとしては、血清鉄が基準値内に回復しただけではダメで、ヘモグロビン濃度(Hb)・ヘマトクリット値(Ht)を定期的に検査して、必要以上の造血作用が認められた際に中止します。

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問311(法規・制度・倫理)

患者より、処方1の薬のラベルに記載されている「生物」について質問があった。薬剤師の説明の内容として、正しいのはどれか。1つ選べ。

 

1.感染症のリスクがあるため、処方1の薬の使用に際し、患者からの文書による同意が必要となる。

 

2.処方1の薬は、植物由来である。

 

3.処方1の薬は、疾病の治療を目的として、人の細胞に導入され、体内で発現する遺伝子を含有するものである。

 

4.処方1の薬は、製薬企業に感染症定期報告を義務付けるなど感染症に関する対策が強化されている。

 

5.処方1の薬を使用した患者の氏名、住所を記録したものを10年間薬局で保存する必要がある。

 

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問311の解説

生物由来製品とは、人その他の生物(植物を除く)に由来するものを原料又は材料として製造をされる医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器のうち、保健衛生上特別の注意が必要なもの。

例として、ワクチン、抗毒素、遺伝子組換えタンパク、培養細胞由来のタンパク、ヘパリンなどの動物抽出成分

 

生物由来製品には、白地に黒枠、黒字をもって【生物】の文字を記載しなければなりません。

記録の保管期限 薬局・病院の管理者 承認取得者
生物由来製品 定め無し 10年
特定生物由来製品 20年 30年

 

1.「×」生物由来製品を使用する際、患者からの文書による同意を得る規定はありません。

 

2.「×」生物由来製品なので、植物由来の原料・材料ではない薬です。

 

3.「×」疾病の治療を目的として、人の細胞に導入され、体内で発現する遺伝子を含有するものは、再生医療等製品のことです。

 

4.「〇」生物由来製品の製造販売業者(製薬企業)などは、感染症定期報告制度において、承認を受けた生物由来製品の感染症に関する最新論文により得られた知見に基づき評価をして、厚生労働大臣に定期的に報告をしなければならないとされています。

 

5.「×」薬局では、生物由来製品を使用した患者の氏名・住所を保存しなければならないという規定はありません。

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