第108回 薬剤師国家試験問題 問270-271(腎機能低下による副作用) | 積小為大!!  健康・社会保険・労働に関すること

第108回 薬剤師国家試験問題 問270-271(腎機能低下による副作用)

薬剤・実務
この記事は約5分で読めます。
Pocket

60歳女性。29歳より双極性障害と診断され精神科クリニックに定期的に通院し、

49歳の時に2型糖尿病と高血圧症を指摘された。

現在、以下の薬剤を服用中である。

1週間前から吐き気とふらつきが出現し、今朝から言葉が出にくくなり、

意識がはっきりしなくなったため大学病院に救急搬送され、入院措置がとられた。

処方薬による副作用が疑われた。

 

(処方)

炭酸リチウム錠200mg   1回2錠(1日6錠)

1日3回 朝昼夕食後   14日分

 

カルバマゼピン錠200mg  1回1錠(1日2錠)

1日2回  朝夕食後 14日分

 

アムロジピン錠5mg   1回1錠(1日1錠)

シタグリプチンリン酸塩水和物錠50mg   1回1錠(1日1錠)

1日1回 朝食後 14日分

 

フルニトラゼパム錠1mg  1回1錠(1日1錠)

1日1回 就寝前 14日分

 

(入院時所見)

身長153cm、体重66.3kg、血圧90/52mmHg、脈拍68拍/分、体温37.2℃、Japan Coma Scale (JCS)3、傾眠傾向

 

(入院時検査値)

末梢血:白血球9,800/μL、赤血球332×104/μL、Hb11.6g/dL、血小板16.4×104/μL、静脈血pH7.39

 

血液生化学:総タンパク6.3g/dL、血清アルブミン3.5g/dL、総ビリルビン0.5mg/dL、AST 21IU/L、ALT 23IU/L、γ-GTP 33IU/L、CK(クレアチンキナーゼ)86IU/L、  血清クレアチニン1.20mg/dL、eGFR36.3mL/min/1.73m2、随時血糖161mg/dL、HbA₁c7.4%、CRP2.0mg/dL尿所見:pH5.5、蛋白(1+)、潜血(2+)、糖(-)、ケトン体(-)頭部CT、MRI:異常なし

問270(実務)

発現した副作用として最も可能性が高いのはどれか。1つ選べ。

 

1.炭酸リチウムによるリチウム中毒

 

2.カルバマゼピンによる再生不良性貧血

 

3.アムロジピンによる横紋筋融解症

 

4.シタグリプチンによる低血糖発作

 

5.フルニトラゼパムによる乳酸アシドーシス

 

スポンサーリンク

問270の解説

血液生化学より、血清クレアチニン1.20mg/dL、eGFR36.3mL/min/1.73m2より腎機能が落ちていることが分かります。

また設問より、1週間前から吐き気・ふらつきが出現、今朝から言葉が出にくくなり、意識がはっきりしない、入院時所見に、傾眠傾向とあります。

 

 

1.「〇」炭酸リチウム(リーマス):躁病・躁状態治療薬

リチウムは、腎排泄型薬剤で、治療域と中毒域が近い薬剤なので、薬物血中濃度モニタリング(TDM)を行い、血中濃度(目安:0.4~1.0mEq/L)を確認することが大切な薬剤です。

 

リチウム中毒:初期症状として食欲低下・嘔吐・下痢などの消化器症状、振戦・傾眠・錯乱などの中枢神経症状、運動失調が見られ、進行すると、全身けいれん。

 

 

2.「×」カルバマゼピン(テグレトール):てんかん治療薬・躁状態治療薬

再生不良性貧血を疑う際は、ヘモグロビン濃度(Hb)・好中球・血小板の値を確認します。

末梢血の値が、Hb11.6g/dL、血小板16.4×104/μLとあるので、再生不良性貧血ではなさそうです。

(Hbの基準値:男性13.5~17.6g/dL・女性11.3~15.2g/dL)

(血小板の基準値:13万~36.9万/μL)

 

 

3.「×」アムロジピン(アムロジン):Ca拮抗薬

横紋筋融解症を疑う際は、ミオグロビンやクレアチンキナーゼ(CK)の値を確認します。

血液生化学より、CK(クレアチンキナーゼ)86IU/Lとあるので、横紋筋融解症ではなさそうです。

(CKの基準値:男:38~196・女:30~172)

 

 

4.「×」シタグリプチンリン(グラクティブ・ジャヌビア):DPP-4阻害薬

低血糖を疑う際は、随時血糖の値を確認します。

血液生化学より、随時血糖161mg/dL、HbA₁c7.4%とあるので、低血糖発作ではなさそうです。

(随時血糖値の基準:空腹:70~109mg/dL、食後2時間:140mg/dL未満)

 

 

5.「×」フルニトラゼパム(サイレース):不眠症治療薬

乳酸アシドーシスを疑う際は、血中の乳酸濃度や血液pHの値を確認します。

末梢血の静脈血が、pH7.39より乳酸アシドーシスではなさそうです。

(血液pHの正常値:7.35~7.45) 乳酸アシドーシスでは、7.35以下

スポンサーリンク

問271(薬剤)

副作用発現の要因として考えられる薬物動態学的変動はどれか。1つ選べ。

 

1.薬物相互作用によるバイオアベイラビリティの上昇

 

2.薬物相互作用によるクリアランスの低下

 

3.血清アルブミン濃度の低下による分布容積の増大

 

4.肝機能低下による肝クリアランス低下

 

5.腎機能低下による腎クリアランス低下

 

スポンサーリンク
問271の解説

問270の解説を参照

1.「×」

 

2.「×」

 

3.「×」

 

4.「×」

 

5.「〇」

2023.12.19時点の記事
PAGE TOP