問114
二次元電気泳動は、等電点電気泳動とSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE)を組み合せたもので、ある生体試料中の多種多様なタンパク質をそれぞれ固有の等電点と分子量の違いを利用して分離する方法である。
図1と図2 は、二次元電気泳動の概要と実験結果を示したものである。
図1 等電点電気泳動:pH4~10の連続的なpH勾配を形成させた棒状のゲルを準備する。
このゲルを用いて電気泳動すると、試料中の各タンパク質はそれぞれの等電点の位置までゲル中を移動する。
(注:実際にはこの段階ではゲルは染色しないためタンパク質は見えないが、図1の下段では電気泳動後にタンパク質が等電点で分離しているイメージを示した。)
0010746292022_crop
図2 SDS-PAGE:等電点電気泳動により試料中のタンパク質を分離した棒状ゲルを、SDS-PAGEの分離ゲルの上に移し、一次元目の等電点電気泳動と直角の方向に電気泳動する。
タンパク質は、その分子量に応じた位置まで移動する。電気泳動の終了後、泳動用のガラス板から取り出したゲルを洗浄し、クマシーブリリアントブルーでタンパク質を染色したところ、50個のスポットを検出した。図2中のスポットAは、等電点5.8、分子量56,000のタンパク質である。
0010746292022_crop
このようなタンパク質分析法とその実験結果に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1.等電点が5.8より小さく、かつ分子量が56,000より大きいスポットは、4つ検出されている。
2.スポットAのタンパク質では、中性溶液中での分子全体の電荷が負になる。
3.スポットBのタンパク質の等電点は、ほぼ5.8である。
4.スポットCのタンパク質は、分子量56,000より小さい。
5.タンパク質のスポットの位置は、リン酸化により、やや右上方向に移動すると推測される。
図1の等電点電気泳動より、各タンパク質が止まった所が、そのタンパク質の等電点。
pHが高い所までしか動かないタンパク質は、塩基性のタンパク質。
逆に、移動距離が大きいpHが低い所まで動いたタンパク質は、酸性のタンパク質。
(※等電点とは、タンパク質分子として電荷がゼロになるところ。)
図2のSDS-PAGEより、各タンパク質の分子量の大小が分かる。
あまり動かないのは、分子量が大きいタンパク質。
逆に移動距離が大きいのは、分子量が小さいタンパク質。
1.「〇」図2の染色したゲルのスポットAは、等電点5.8、分子量56,000のタンパク質と書いてある。
スポットAより、右上の区画が等電点5.8より小さく、かつ分子量が56,000より大きいスポットなので数えると、4つ検出されています。
2.「〇」スポットAのタンパクは、等電点が5.8なので酸性タンパク質。
よって、中性溶液中では、分子全体の電荷が負になっています。
3.「×」スポットBのタンパク質の等電点は、6と7の間にあります。
4.「〇」スポットCのタンパク質の分子量は、スポットAのタンパク質より、移動距離が長いので、分子量は56,000より小さいと考えられます。
5.「〇」タンパク質をリン酸化すると、タンパク質は、酸性に傾き、かつ分子量が多くなるので、等電点はより酸性側に、そしてSDS-PAGEによる移動距離は短くなるので、右上方向に移動すると推測できます。