問246-247(薬理・実務)
65歳男性。
肝腫瘍の精査目的で来院し、CT検査にてS2区域に35mmの乏血性腫瘍が確認された。
入院し、超音波ガイド下で経皮的に生検針を刺し、肝臓の一部を採取する肝生検を実施することになった。
入院予定2週間前の外来受診の際に、以下の薬剤を継続して服用していることを薬剤師が聴取した。
(処方)
クロピドグレル錠75mg 1回1錠(1日1錠)
アムロジピン口腔内崩壊錠2.5mg 1回1錠(1日1錠)
ランソプラゾール口腔内崩壊錠30mg 1回1錠(1日1錠)
フェノフィブラート錠80mg 1回2錠(1日2錠)
グリメピリド錠1mg 1回1錠(1日1錠)
1 日1回 朝食後 28日分
問246(薬理)
この患者が継続服用していることが確認された薬物の作用として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)を阻害して、グルコースによるインスリン分泌を促進する。
2.ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)を刺激して、リポタンパク質リパーゼ(LPL)を活性化する。
3.K+と競合して、胃の壁細胞のH+,K +-ATPaseを可逆的に阻害することで、H+分泌を抑制する。
4.血小板のセロトニン5-HT2受容体を遮断して、細胞内Ca2+濃度上昇を抑制する。
5.活性代謝物が血小板のADP P2Y12受容体を遮断して、細胞内サイクリックAMP(cAMP)量を増加させる。
問246の解説
アムロジピン(アムロジンⓇ・ノルバスクⓇ)は、Ca拮抗薬に分類され、末梢血管や冠血管の平滑筋を弛緩させ、降圧作用を示します。
1.「×」DPP-4阻害薬(~グリプチン)は、インスリン分泌を促すGLP-1(インクレチンの1種)を分解するDPP-4(酵素)を阻害することによって、インスリン分泌を促進させます。
グリメピリド(アマリールⓇ)は、SU剤に分類されるので、膵臓のβ細胞を刺激してインスリン分泌を促進させます。
2.「〇」フェノフィブラート(リピディルⓇ・トライコアⓇ)は、PPARαを刺激して、リポタンパク質リパーゼ(LPL)を活性化させ、中性脂肪を低下させます。
3.「×」ボノプラザン(タケキャブⓇ)は、K+と競合して、胃壁細胞のH+,K +-ATPaseを阻害し、H+分泌を抑制します。
ランソプラゾール(タケプロンⓇ)は、胃壁細胞のH+,K +-ATPaseを阻害し、H+分泌を抑制します。
4.「×」サルポグレラート(アンプラーグⓇ)は、5-HT2受容体遮断作用により、血小板凝集が抑制されます。
5.「〇」クロピドグレル(プラビックスⓇ)の活性代謝物が、血小板のADP受容体サブタイプ(P2Y12受容体)を阻害することにより、血小板内のcAMPが増加するので、血小板凝集が抑制されます。
問246の解答:2と5
問247(実務)
この患者で肝生検を行うにあたり休薬する薬剤として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.クロピドグレル錠
2.アムロジピン口腔内崩壊錠
3.ランソプラゾール口腔内崩壊錠
4.フェノフィブラート錠
5.グリメピリド錠
問247の解説
肝臓の機能は多様で、代謝・解毒・胆汁生成などがあり、血液も豊富に存在する臓器です。
侵襲的な医療措置(検査・手術)を行う場合には、出血リスクがある薬や、血栓形成のリスクがある薬について、服用を継続するか検討します。
1.「〇」クロピドグレル(プラビックスⓇ)は、抗血小板薬なので休薬を検討します。
2.「×」アムロジピン(アムロジンⓇ・ノルバスクⓇ)は、降圧薬なので、服用を継続します。
3.「×」ランソプラゾール(タケプロンⓇ)は、胃酸分泌を抑制させるPPIなので、服用を継続します。
4.「×」フェノフィブラート(リピディルⓇ・トライコアⓇ)は、副作用として肝機能の悪化がありますが、肝生検の際に、中止する必要はなく、服用を継続します。
5.「〇」侵襲的な医療措置(検査・手術)を行う場合、ストレス反応(コルチゾールの分泌増加)や食事摂取が不規則となったりします。そのため、血糖値が変動しやすくなり、低血糖のリスクが高くなるので、SU剤であるグリメピリド(アマリールⓇ)を、インスリンに変更します。
問247の解答:1と5