問262-263(実務/薬理)
70歳男性。糖尿病と心不全で治療中。
3年前に眼圧の上昇が指摘され、原発開放隅角緑内障との診断を受け、
処方1による治療を開始した。なお、同時に白内障の診断も受けている。
点眼液による治療開始後、目の周囲が黒ずむなど眼瞼色素沈着が観察されるようになったため、
処方1から処方2へ変更になった。
その後、眼圧低下が不十分と診断され、現在は処方2に加えて処方3が追加となっている。
(臨床検査値)
HbA1c 8.0%、BUN 20mg/dL、血清クレアチニン 1.2mg/dL、
尿中ケトン体(+)、血清浸透圧 295mOsm/L
(処方1)
ラタノプロスト点眼液0.005%(2.5mL/本) 1本
1日1回 朝 両眼に点眼
(処方2)
オミデネパグ イソプロピル点眼液0.002%(2.5mL/本) 1本
1日1回 朝 両眼に点眼
(処方3)
ブリンゾラミド懸濁性点眼液1.0%(5mL/本) 1本
1日2回 朝夕 両眼に点眼
問262(実務)
点眼液使用に関して、薬剤師がこの患者に指導する内容として、適切なのはどれか。1つ選べ。
1.処方2と処方3の薬剤については、朝の点眼時、時間をおかずに連続して点眼すること。
2.処方3の薬剤は懸濁性点眼液なので、朝の点眼時には、処方3の薬剤を最初に使用すること。
3.処方2の薬剤は水分の排出を促すので、いつもより水分を多めに摂取すること。
4.処方2の薬剤は保存剤が含まれているので、毎回よく振って使用すること。
5.処方3の薬剤は点眼後、全身作用を起こすことがあるので、過敏性の兆候に注意すること。
問262の解説
ラタノプロスト(キサラタンⓇ):プロスタノイドFP受容体作動薬(プロスタグランジンF2α誘導体)で、房水の流出を促進して眼圧を下げます。
オミデネパグ(エイベリスⓇ):プロスタノイドEP2受容体作動薬で、房水の流出を促進して眼圧を下げます。
ブリンゾラミド(エイゾプトⓇ):炭酸脱水酵素阻害薬で、房水の産生を抑制して眼圧を下げます。
1.「×」複数の点眼薬を使用する際、連続で点眼すると、先に使用した点眼薬が、後から使用した点眼薬によって流されてしまうことがあるので、一般的には5分以上の間隔をあけて点眼することが推奨されています。
また、点眼薬の種類によって、①水溶性点眼液→②懸濁性点眼液→③点眼後ゲル化する点眼液→④眼軟膏の順が推奨されています。
よって、朝の点眼時は、処方2(オミデネパグ)→5分以上間隔をあけ→処方3(ブリンゾラミド懸濁)がよいと考えます。
2.「×」上記参照
懸濁性点眼液と、他の点眼薬を併用する場合には、少なくとも10分以上間隔をあけて点眼します。
3.「×」処方2のオミデネパグは、EP2受容体作動薬で、房水の流出を促進して眼圧を下げますが、いつもより水分を多めに摂取する必要はありません。
4.「×」オミデネパグ イソプロピル点眼液0.002%(2.5mL/本)には、添加剤として、ベンザルコニウムが防腐剤(保存剤)として入っているが、毎回よく振って使用する必要はありません。
5.「〇」ブリンゾラミドは、点眼後、吸収され全身作用を起こすことがあるので、過敏性の兆候に注意する必要があります。
問262の解答:5
問263(薬理)
しばらくして白内障の手術(眼内レンズ挿入術)のため入院となり、処方2が中止となった。
処方2に替えて、新たに異なる作用機序の薬物を追加することになった。
追加する薬物の作用機序として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.アドレナリンα2受容体を刺激して、毛様体における房水産生を抑制するとともに、ぶどう膜強膜流出経路からの房水流出を促進する。
2.アドレナリンβ1受容体を遮断して、毛様体における房水産生を抑制する。
3.炭酸脱水素酵素を阻害して、毛様体における房水産生を抑制する。
4.Rhoキナーゼを阻害して、線維柱帯-シュレム管経路からの房水流出を促進する。
5.プロスタノイドEP₂受容体を刺激して、線維柱帯-シュレム管経路及びぶどう膜強膜流出経路からの房水流出を促進する。
問263の解説
1.「〇」ブリモニジン(アイファガンⓇ):アドレナリンα2受容体作動薬についての記述です。
2.「×」チモロール(チモプトールⓇ):β遮断薬についての記述です。
設問の患者は、糖尿病と心不全を罹患しているので、代替薬としては不適です。
3.「×」処方3のブリンゾラミド(エイゾプトⓇ):炭酸脱水酵素阻害薬についての記述です。
4.「〇」リパスジル(グラナテックⓇ):Rhoキナーゼ阻害薬についての記述です。
5.「×」処方2のオミデネパグ(エイベリスⓇ):プロスタノイドEP2受容体作動薬についての記述です。
問263の解答:1と4