問250-251(実務/薬理)
50歳男性。会社員。人事異動で1年前に本社の営業課長を命じられた。
しかし仕事に順応できず、ストレス、不安感及び過食が3ケ月続いた。
上司のすすめもあり心療内科を受診し、うつ病と診断され以下の処方1で治療中である。
(処方1)
エスシタロプラム錠20mg
1回1錠(1日1錠) 1日1回 夕食後 28日分
内服開始後、特に副作用は現れていないが、十分な効果が認められないため、医師は処方に新たに薬剤を追加して併用療法を行いたいと考えている。
なお、男性は現在排尿障害を伴う前立腺肥大症で処方2を内服中である。
(処方2)
デュタステリドカプセル0.5mg
1回1カプセル(1日1カプセル) 1日1回 朝食後 28日分
問250(実務)
この患者に対して禁忌ではなく、併用療法として用いることができる薬物はどれか。1つ選べ。
1.アミトリプチリン
2.アリピプラゾール
3.マプロチリン
4.ミルナシプラン
5.クロミプラミン
問250の解説
エスシタロプラム(レクサプロⓇ):セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
デュタステリド(アボルブⓇ):5α還元酵素阻害薬
設問の患者は、前立腺肥大症なので、新たに追加する薬剤は、排尿に影響しない薬を選択します。
1.「×」アミトリプチリン(トリプタノールⓇ):三環系抗うつ薬
抗コリン作用があるため、前立腺肥大症などの尿閉のある患者には禁忌です。
2.「〇」アリピプラゾール(エビリファイⓇ):ドパミン受容体部分作動薬(DSS)
排尿に影響を与える可能性が低いため、前立腺肥大症の患者にも使用することができると考えます。
3.「×」マプロチリン(ルジオミールⓇ):四環系抗うつ薬
抗コリン作用があるため、前立腺肥大症などの尿閉のある患者には禁忌です。
4.「×」ミルナシプラン(トレドミンⓇ):セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
ノルアドレナリン再取り込み阻害作用があるため、前立腺肥大症などの尿閉のある患者には禁忌です。
5.「×」クロミプラミン(アナフラニールⓇ):三環系抗うつ薬
抗コリン作用があるため、前立腺肥大症などの尿閉のある患者には禁忌です。
問250の解答:2
問251(薬理)
前問において禁忌のため用いることができないと判断された薬物は、この患者の症状を悪化させるおそれがある。その理由はどれか。2つ選べ。
1.ドパミンD2受容体が遮断されるため。
2.ムスカリンM3受容体が遮断されるため。
3.セロトニン5-HT3受容体が遮断されるため。
4.アドレナリンα1受容体が刺激されるため。
5.アンドロゲン受容体が刺激されるため。
問251の解説
1.「×」
2.「〇」抗コリン作用を示す薬剤が、膀胱平滑筋に存在するM3受容体を遮断すると、膀胱平滑筋が弛緩するため、排尿がしにくくなります。
3.「×」
4.「〇」ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を示す薬剤は、ノルアドレナリンが前立腺や尿道に存在するα1受容体を刺激すると、前立腺や尿道が収縮するため、排尿がしにくくなります。
5.「×」
問251の解答:2と4