問342
48歳女性。以前から腹部膨満感や下腹部の痛みを自覚していた。
病院を受診したところ卵巣がんが判明し、Stage Ⅲと診断され手術が施行された。
術後化学療法としてパクリタキセル、カルボプラチン(TC 療法)とベバシズマブによる併用療法が開始となった。
薬剤師が行う薬学的関与として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1.治療中は、定期的な尿検査によって尿タンパクの有無を確認する。
2.パクリタキセル投与に伴い、予防的な低カリウム血症対策を実施するように医師に提案する。
3.血圧が上昇したときは、ベバシズマブの中止を医師に提案する。
4.腎障害予防策として、カルボプラチン投与前後に十分な補液と利尿剤の投与が実施されているかを確認する。
5.カルボプラチンの投与量の監査は、腎機能を考慮して行う。
1.「〇」ベバシズマブ(アバスチンⓇ):抗VEGF(血管内皮増殖因子)モノクローナル抗体
VEGFとモノクローナル抗体が結合し、VEGFが受容体に結合できなくなるので、血管新生が抑制され、腫瘍細胞が増殖できなくなります。
ベバシズマブの副作用として、創傷治癒遅延・蛋白尿・高血圧などが知られています。
そのため、治療中は、定期的な尿検査によって尿タンパクの有無を確認する必要があります。
(VEGFが阻害されることで、糸球体の毛細血管の修復が滞り、糸球体のフィルター機能が低下し、尿中にタンパクが漏れ出てしまうと考えられます。)
2.「×」パクリタキセル(タキソールⓇ):植物性抗悪性腫瘍薬
チュブリンに作用し、微小管の重合を促進、微小管の安定化・過剰形成を引き起こし細胞分裂を阻害。
パクリタキセルの副作用として、骨髄抑制・末梢神経障害が知られています。
3.「×」降圧薬でコントロール不能の高血圧の場合には、ベバシズマブの中止を医師に提案します。
(VEGFが阻害されることで、内皮型NO合成酵素の活性が阻害され、血圧が上昇すると考えられます。)
4.「×」カルボプラチン(パラプラチンⓇ):抗悪性腫瘍薬(白金製剤)
がん細胞のDNA鎖と結合して架橋を形成し、がん細胞の分裂を阻害
カルボプラチンは、白金製剤の中では副作用が少なく、腎障害・骨髄抑制・吐き気・難聴・末梢神経障害などが知られています。
同じ白金製剤のシスプラチン(ランダⓇ)では、投与前後に腎障害予防対策として、十分な補液と利尿剤の投与が必要ですが、 カルボプラチンでは、補液や利尿剤の投与は規定されていません。
5.「〇」カルボプラチンは、ほとんど腎臓から排泄されるため、GFRに基づいて体内の薬物動態を予測できるため、投与量の監査は、腎機能を考慮して行います。
臨床では、Calvert(カルバート)式:カルボプラチン投与量(mg)=目標AUC(mg/mL×分)×(GFR(mL/分)+25)を用います。