問222-223
52歳男性。
中枢性尿崩症の診断を受け、以下の薬剤による治療が開始となった。
(処方)
デスモプレシン点鼻スプレー2.5μg 1本
1日2回 1回4噴霧
問222(実務)
この患者への服薬指導として、誤っているのはどれか。1つ選べ。
1.使用前に鼻をかんでから使用してください。
2.使用時、左右の鼻腔に交互にスプレーしてください。
3.スプレー時には、息を深く吸ってください。
4.使用中は、医師より指示された飲水量を守ってください。
5.冷蔵庫に容器を立てた状態で保管してください。
問222の解説
デスモプレシンは、腎臓の集合管にあるV2受容体を刺激することにより、血管内への水分の再吸収を促進させ、尿量を減少させます。
1.「〇」吸収を安定させるため、使用前に鼻をかんでから使用するように伝えます。
2.「〇」スプレー回数が複数の場合は、左右の鼻腔に交互にスプレーするように伝えます。
3.「×」スプレー時は、頭を少し後ろに傾け、ノズルの先端を鼻腔に入れ、息を止めてスプレーします。
スプレー後は、薬液を鼻の奥まで行き渡らせるように、頭を後ろに傾けた状態で軽く鼻を押さえ、鼻から静かに息を吸うようにします。
4.「〇」抗利尿作用による、水中毒症状(倦怠感、頭痛、悪心・嘔吐など)を起こす可能性があるため、過度の飲水を避け、点滴・輸液による水分摂取にも注意する必要があります。
5.「〇」保管方法としては、凍結を避け冷蔵庫で瓶を立てた状態で保管します。
問222の解答:3
問223(物理・化学・生物)
処方薬は、この患者で不足しているホルモンの作用を補う目的で使われている。
そのホルモンに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.ジスルフィド結合で架橋されたA、B鎖からなるポリペプチドである。
2.視床下部ホルモンの刺激により、下垂体前葉の細胞で産生される。
3.心臓に作用し、グアニル酸シクラーゼを活性化して、血圧を低下させる。
4.血管平滑筋細胞に作用し、ホスホリパーゼCを活性化して、血管を収縮させる。
5.腎集合管の細胞に作用し、プロテインキナーゼAを活性化して、水の再吸収を促進する。
デスモプレシンは、抗利尿ホルモンであるバソプレシンの誘導体です。
バソプレシンは、脳下垂体後葉から分泌される、ペプチドホルモンです。
1.「×」バソプレシンの構造は、9個のアミノ酸(Cys-Tyr-Phe-Gln-Asn-Cys-Pro-Arg-Gly-CONH2)からなるペプチドホルモンで、第1番目と第6番目のシステイン(Cys)が、ジスルフィド(S-S)結合した環状構造をしています。
2.「×」バソプレシンは、視床下部ホルモンの刺激により、下垂体後葉の細胞で産生されます。
3.「×」バソプレシン受容体
V1a受容体(Gqタンパクと共役):血管平滑筋細胞に存在し、血管を収縮させ、血圧を上昇。
V1b受容体(Gqタンパクと共役):下垂体前葉に存在し、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌。
V2 受容体(Gsタンパクと共役): 腎臓の集合管に存在し、水の再吸収を促進。
4.「〇」バソプレシンが、血管平滑筋細胞に存在するV1a受容体に結合すると、共役しているGqタンパクを介して、ホスホリパーゼCが活性化されます。
活性化したホスホリパーゼCは、イノシトールリン脂質を分解して、ジアシルグリセロールとイノシトール3リン酸を産生して、血管平滑筋細胞内のCa濃度を上昇させ、血管を収縮させます。
5.「〇」バソプレシンが、腎臓の集合管に存在するV2受容体に結合すると、共役しているGsタンパクを介して、アデニル酸シクラーゼが活性化されます。
活性化したアデニル酸シクラーゼは、ATPからcAMPを産生して、cAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)を活性化させ、水チャネルであるアクアポリン2から水の再吸収を促進させます。