第108回 薬剤師国家試験問題 問302−303(帯状疱疹問題) | リベラルアーツ!! 健康・社会保険・労働に関すること

第108回 薬剤師国家試験問題 問302−303(帯状疱疹問題)

第108回 薬剤師国家試験
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58歳女性。企業の管理職として勤務している。最近仕事が忙しく、ストレスがたまっていた。勤務中、椅子に座っている時に背中の違和感を感じた。翌日、ズキズキと痛むような症状が発現し、患部を見ると赤く連なった丘疹が広がっていた。症状が悪化していることから、医療機関を受診し、診断の結果、以下が処方された。

 

 

(処方)

バラシクロビル錠500mg    1回2錠(1日6錠)

1日3回 朝昼夕食後 7日分
 
プレガバリン口腔内崩壊錠75mg   1回1錠(1日2錠)

1日2回 朝夕食後  14日分
 
ジメチルイソプロピルアズレン軟膏0.033%    20g

1日4~5回 背中に塗布

問302(病態・薬物治療)

この患者の疾患と治療薬に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

 

1.ストレスによる免疫の低下は発症の危険因子である。

 

2.背中の皮疹は両側性に広がった。

 

3.プレガバリンが抗炎症作用を示すと期待される。

 

4.原因となるウイルスは皮膚内に潜伏していた。

 

5.痛みが強い場合には、アセトアミノフェンなどの鎮痛薬を併用してもよい。

 

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問302の解説

設問より、最近仕事が忙しく、ストレスがたまっていた。ズキズキと痛むような症状が発現し、患部に赤く連なった丘疹が広がっていた。バラシクロビルが日に3000mg処方されていることより、帯状疱疹を疑います。

 

 

【帯状疱疹】

帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルス(ヘルペスウイルス3型)によって起こります。

初感染は、水痘(水ぼうそう)として感染し、水痘が治癒した後、水痘帯状疱疹ウイルスは、後根神経節に潜伏して、ストレス・加齢・抗ガン剤などで免疫力が下がると、帯状疱疹が現れます。

帯状疱疹の症状は、神経が損傷するため、ピリピリする痛み・疼痛、発疹、水疱などが見られます。

病変部は、神経に沿って生じるため体の左右どちらかに現れます。

(※帯状疱疹が他の人に帯状疱疹として、感染することはありませんが、水痘ウイルスに感染したことがないと、帯状疱疹の患者さんから水痘として感染することはあるので、注意が必要です。)

 

1.「〇」ストレスなどにより免疫力が低下すると、後根神経節に潜伏している水痘帯状疱疹ウイルスが活性化し、帯状疱疹が発症しやすくなります。

 

2.「×」帯状疱疹の症状は、神経に沿って生じるため片側性

 

3.「×」プレガバリン(リリカ®):神経障害性疼痛・線維筋痛症疼痛治療薬

プレガバリンは、神経の電位依存性Caチャネルのαδサブユニットに結合して、Ca2+の流入を抑制し、グルタミン酸などの神経伝達物質の遊離を抑制するため、神経障害性疼痛などに効果を示します。

(※ジメチルイソプロピルアズレン(アズノール®軟膏)は、抗炎症作用を目的として処方されていると考えます。)

 

 

4.「×」水痘帯状疱疹ウイルスは、後根神経節に潜伏しています。

 

5.「〇」帯状疱疹の痛みが強い場合には、NSAIDs・アセトアミノフェンなどの鎮痛薬も併用します。

 

 

【補足】抗ヘルペス治療薬

アシクロビル(ゾビラックス®

バラシクロビル(バルトレックス®

ファムシクロビル(ファムビル®

アメナメビル(アメナリーフ®

ビダラビン(アラセナ®

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問303(実務)

7日後、皮疹は軽減し、経過観察となったが、痛みが改善しておらず、対症療法を継続している。この女性は以前にも同様な発疹を繰り返していることから、ワクチンの接種を検討することになった。本疾患に対するワクチンの患者への説明内容として、適切なのはどれか。1つ選べ。

 

1.ワクチン接種は、次回発症時に行う。

 

2.生ワクチンと不活化ワクチンが承認されている。

 

3.ワクチン接種時は、バラシクロビル錠を服用する必要がある。

 

4.発症後にワクチン接種をすることにより、皮疹はすぐに軽快する。

 

5.ワクチン接種により、ウイルスを除去できる。

 

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問303の解説

1.「×」ワクチン接種は、ウイルスや細菌に対し免疫力を獲得する目的で行われます。免疫があると、病気の発症抑制や、発症した際の症状軽減に繋がります。そのため、ワクチン接種は、発症前に行われます。

 

2.「〇」帯状疱疹のワクチンには、生ワクチンの水痘ワクチンと、不活化ワクチンのシングリックス®が承認されています。

 

3.「×」ワクチン接種とバラシクロビルを併用する必要はありません。

 

4.「×」発症後にワクチン接種しても、既に出ている皮疹は軽快しません。

 

5.「×」ワクチン接種は、免疫力を獲得するのが目的なので、ウイルスが除去できるわけではありません。

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