第108回 薬剤師国家試験問題 問300−301(開放 隅角緑内障 治療薬問題) | リベラルアーツ!! 健康・社会保険・労働に関すること

第108回 薬剤師国家試験問題 問300−301(開放 隅角緑内障 治療薬問題)

第108回 薬剤師国家試験
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56歳女性。身長158cm、体重58kg。健康診断で眼圧上昇を指摘され、眼科受診。初期眼圧右眼22mmHg、左眼24mmHg。眼底検査、隅角検査及び視野検査等の結果、原発開放隅角緑内障と診断され、トラボプロスト点眼液0.004%が処方された。この患者の併用薬、検査値は以下のとおりである。

 

 

(併用薬)

エルデカルシトールカプセル0.75μg    1回1カプセル(1日1カプセル)

1日1回 朝食後

レバミピド錠100mg 1回1錠(1日3錠)

1日3回 朝夕食後、就寝前

インダカテロールマレイン酸塩吸入用カプセル150μg   1回1カプセル(1日1カプセル)

1日1回 朝

 

 

(身体所見及び検査値)

血圧128/80mmHg、AST 25 IU/L、ALT 28 IU/L、血清クレアチニン0.72mg/dL、

eGFR 64.7mL/min/1.73m2、FEV1(1秒率)67%

問300(病態・薬物治療)

この患者に関する病態と薬物治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

 

1.眼圧上昇の主な原因は、房水の流出障害である。

 

2.進行しても眼痛以外の自覚症状は生じない。

 

3.トラボプロストは、瞳孔平滑筋を収縮させるために処方されている。

 

4.トラボプロストには、虹彩や眼瞼への色素沈着の副作用がある。

 

5.トラボプロスト点眼液は、症状にあわせて1日の点眼回数を調節する。

 

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問300の解説

1.「〇」原発開放隅角緑内障は、隅角にある線維柱帯が目詰まりを起こすことにより、毛様体で産生された眼房水が、シュレム管から排出されにくくなり眼圧が上昇する疾患。(眼圧の正常値:10~20mmHg)

 

2.「×」緑内障の症状が進行した場合、眼痛以外にも視野欠損などの症状が生じます。

 

3.「×」トラボプロスト(トラバタンズ®):プロスタグランジンF2α誘導体

トラボプロスト(プロスタグランジン製剤)は、ぶどう膜強膜流出経路から眼房水の排泄を促進させ眼圧を下げるために処方されていると考えられます。

分類 薬剤名
眼房水産生抑制薬

β遮断薬

カルテオロール(ミケラン®
炭酸脱水酵素阻害薬 ブリンゾラミド(エイゾプト®

ドルゾラミド(トルソプト®

眼房水排出促進薬 プロスタグランジン製剤 トラボプロスト(トラバタンズ®
Rhoキナーゼ阻害薬 リパスジル(グラナテック®
α遮断薬 ブナゾシン(デタントール®

 

4.「〇」プロスタグランジン点眼薬の副作用として、虹彩や眼瞼への色素沈着(メラニンの増加)による色調変化や眼周囲の多毛化が現れることがあります。そのため、点眼液が眼瞼皮膚などについた場合、よく拭き取るか、洗顔するよう患者に伝えます。

 

5.「×」トラボプロスト点眼液は、頻回投与により眼圧下降作用が減弱する可能性があるので、1回1滴、1日1回の点眼薬です。

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問301(実務)

眼圧の低下が不十分であるため、薬物治療を追加することになった。この患者に追加する点眼剤として適切でないのはどれか。1つ選べ。

 

1.ブリモニジン酒石酸塩点眼液

 

2.ブリンゾラミド懸濁性点眼液

 

3.カルテオロール塩酸塩持続点眼液

 

4.リパスジル塩酸塩水和物点眼液

 

5.ドルゾラミド塩酸塩点眼液

 

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問301の解説

1.「〇」ブリモニジン(アイファガン®):α2受容体作動薬

ブリモニジンは、眼房水産生抑制・ぶどう膜強膜流出路を介した眼房水流出促進による眼圧降下

 

2.「〇」ブリンゾラミド(エイゾプト®):炭酸脱水酵素阻害薬

ブリンゾラミドは、炭酸脱水酵素Ⅱを阻害して、眼房水の産生を抑制し眼圧降下

 

3.「×」カルテオロール(ミケラン®):β受容体遮断薬

カルテオロールは、眼房水産生抑制による眼圧下降

β受容体遮断作用による気管支平滑筋収縮作用により、喘息発作を誘発することがあるので、気管支喘息の既往歴のある患者、重篤な慢性閉塞性肺疾患のある患者には禁忌。

 

設問より、FEV1(1秒率)67%(基準値:70%以上)

1秒率:肺機能指標。 深く息を吸って一気に吐き出した空気量に対し、最初の1秒間で吐き出した量の割合。1秒率が低下している場合、閉塞性換気障害(気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患)を疑います。

インダカテロール(オンブレス®:長時間型β受容体刺激薬)を吸入しているので、カルテオロール(β受容体遮断薬)を選択すると、慢性閉塞性肺疾患の症状が悪化する恐れがあります。

 

 

4.「〇」リパスジル(グラナテック®):Rhoキナーゼ阻害薬

リパスジルは、Rhoキナーゼを阻害して、線維柱帯・シュレム管を介する流出路から眼房水の流出を促進し眼圧降下

 

5.「〇」ドルゾラミド(トルソプト®):炭酸脱水酵素阻害薬

ドルゾラミドは、炭酸脱水酵素を阻害して、眼房水の産生を抑制し眼圧降下

 

【補足】

エルデカルシトール(エディロール®):活性型ビタミンD3製剤

レバミピド(ムコスタ®):胃粘膜保護薬

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