問294・295(病態/実務)
29歳女性。既婚。3年前に夫をドナーとした生体腎移植(ABO血液型適合)を受け、拒絶反応を抑制するため免疫抑制薬を以下の処方で服用しながら、生活をしている。
腎移植後、体調がよくなり生活も安定してきたので、子供を欲しいと思うようになった。
(処方)
シクロスポリンカプセル25mg 1回3カプセル(1日6カプセル)
1日2回 朝夕食後 28日分
問294(病態・薬物治療)
患者の希望を考慮すると、今後の免疫抑制薬として選択可能なのはどれか。2つ選べ。
1.シクロスポリン
2.タクロリムス
3.バシリキシマブ
4.ミゾリビン
5.エベロリムス
問294の解説
1.「〇」シクロスポリン(ネオーラルⓇ):カルシニューリン阻害薬
2.「〇」タクロリムス(プログラフⓇ・グラセプターⓇ):カルシニューリン阻害薬
T細胞活性化のシグナル伝達に必要な、カルシニューリン(酵素)を阻害することで、サイトカイン産生・免疫抑制作用を示します。
3.「×」バシリキシマブ(シムレクトⓇ):抗CD25モノクローナル抗体
腎移植後の急性拒絶反応の抑制に用いられるが、IgG抗体(胎盤通過)製剤のため、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、禁忌。
4.「×」ミゾリビン(ブレディニンⓇ):核酸合成抑制
催奇形性を疑う症例報告があるため、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、禁忌。
5.「×」エベロリムス(サーティカンⓇ):mTOR阻害薬
細胞の成長・増殖を制御するシグナル伝達を阻害し、生殖発生毒性が認められるため、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、禁忌。
問294の解答:1と2
問295(実務)
1年後、この患者は妊娠したが、妊娠第25週目になって血圧の上昇(154/112 mmHg)がみられたため入院し、降圧療法を行うことになった。
なお、入院時の血液検査結果は以下のとおりである。
(検査値)
BUN 18mg/dL、血清クレアチニン 0.7mg/dL、eGFR 80mL/min/1.73m2、
Na 143mEq/L、K 5.2mEq/L、Cl 105mEq/L
この患者に対して禁忌ではなく、用いることができる降圧薬はどれか。2つ選べ。
1.アテノロール
2.エナラプリルマレイン酸塩
3.エサキセレノン
4.バルサルタン
5.ニフェジピン
問295の解説
1.「〇」アテノロール(テノーミンⓇ):β1遮断薬
2.「×」エナラプリル(レニベースⓇ):ACE阻害薬
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、禁忌
3.「×」エサキセレノン(ミネブロⓇ):ミネラルコルチコイド受容体遮断薬
検査値より、K 5.2mEq/Lとあるため、除外
4.「×」バルサルタン(ディオバンⓇ):ARB
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、禁忌
5.「〇」ニフェジピン(アダラートⓇ):Ca拮抗薬
問295の解答: 1と5
