問337(実務)
42歳男性。身長165cm。
院内の安全対策研修会で、下記の事例をもとに医療事故の対応を多職種で議論した。
事例60歳女性。関節リウマチの診断で今回より初めて1日あたり
メトトレキサートカプセル2mg 3カプセルが4週間分処方された。
本来、週1回服用のところ、連日服用で、服用開始5日目に倦怠感、食欲不振、歯肉出血を認めた。
翌日には喀血により救急搬送され、当院に緊急入院となった。
当日の検査の結果、口腔粘膜障害、胃腸障害、肝機能障害、骨髄抑制が認められた。
議論の中で、この患者への処置について薬剤師が意見を求められた。
この患者に 対して効果的な対処はどれか。2つ選べ。
1.ホリナートカルシウムの投与
2.ビタミンK製剤の投与
3.薬用炭の投与
4.アスピリン製剤の投与
5.炭酸水素ナトリウム注射液の投与
問337の解説
メトトレキサート(リウマトレックスⓇ):葉酸代謝拮抗薬
関節リウマチ患者の関節の中では、リンパ球などの炎症性細胞が、活発に活動・増殖しています。
葉酸は、細胞増殖に必要なビタミンで、葉酸代謝拮抗薬のメトトレキサートを服用することにより、リンパ球の増殖や、炎症部位への好中球の遊走などが抑制されます。
関節リウマチで、メトトレキサートを服用する際は、1週間のうち1~2日服用して、残りの期間は休薬します。副作用の予防目的で葉酸(フォリアミンⓇ)も服用する際は、メトトレキサートの最終服用日の翌日または翌々日に服用します。
1.「〇」ホリナート(ロイコボリン):抗葉酸代謝拮抗薬
葉酸代謝拮抗薬(メトトレキサート)の毒性軽減に用いられます。
2.「×」ビタミンK製剤(ケーワンⓇ:フィトナジオン/ケイツーⓇ:メナテトレノン)は、ワルファリン(ワーファリン)の解毒に用いられます。
他にも、ワルファリンの解毒薬には、ケイセントラⓇ(プロトロンビン複合体)があります。
3.「×」薬用炭は、消化管内に存在する、分子量100~5000程度の物質を吸着しますが、今回のケースでは、メトトレキサートは吸収が終わっていると考えられるので用いません。
4.「×」アスピリン(バイアスピリンⓇ):抗血小板薬
5.「〇」炭酸水素ナトリウム(メイロンⓇ):pHの上昇により尿中排泄が促進される薬物中毒に用います。
炭酸水素ナトリウムを注射することによりpHが上昇するので、酸性薬剤であるメトトレキサートは、尿中排泄量が増加します。
問337の解答:1と5