問335(実務)
66歳男性。身長168cm、体重57kg。
10年前からアルコール性肝炎及び無症候性脳梗塞で病院に定期通院の中、前回の診察で逆流性食道炎と診断され、ファモチジンが処方された。
前回より1ケ月経過した今回の受診時においても、逆流性食道炎の症状が続いていた。
以下に、直近の処方並びに前回、今回の検査結果及び患者からの聞き取り内容を示す。
(処方1)
ウルソデオキシコール酸錠50mg 1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 14日分
(処方2)
チクロピジン塩酸塩錠100mg 1回 2錠(1日2錠)
ニフェジピン徐放錠20mg 1回1錠(1日1錠)
バルサルタン錠80mg 1回 1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 14日分
(処方3)
ファモチジン錠20mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 夕食後 14日分
(検査値)
前回(1ケ月前) | 今回 | |
血圧 mmHg | 128/82 | 126/80 |
血清アルブミン g/dL | 3.2 | 3.4 |
AST IU/dL | 276 | 266 |
ALT IU/dL | 292 | 277 |
総ビリルビン mg/dL | 2.4 | 2.2 |
アンモニア μg/dL | 97 | 101 |
血清クレアチニン mg/dL | 1.1 | 1.0 |
CCr mL/min | 53.3 | 58.6 |
白血球/μL | 6,300 | 6,100 |
赤血球×104/μL | 398 | 325 |
血小板×104/μL | 15.8 | 4.5 |
(聞き取り内容)
・手足のむくみについては、自覚していますが悪化したとは思いません。
・気がついたら青あざが出来ていました。
検査値並びに聞き取り内容に基づくこの患者の最近1ケ月間に関する担当薬剤師のアセスメントとして最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1.ファモチジンによる血小板減少が疑われる。
2.ウルソデオキシコール酸による肝機能改善が認められる。
3.チクロピジンによる汎血球減少が疑われる。
4.ニフェジピンは CCr に基づいて10mg に減量すべきである。
5.バルサルタンによる横紋筋融解症が疑われる。
問335の解説
1.「〇」ファモチジン(ガスターⓇ):H2受容体拮抗薬
検査値より、1ヶ月前と今回を比較して、血小板数が、15.8万から4.5万(基準値:15万~35万)へと大きく減少しているので、血小板減少を疑います。
2.「×」ウルソデオキシコール酸(ウルソⓇ):肝・胆・消化機能改善薬
検査値より、1ヶ月前と今回を比較して、血清アルブミン・AST・ALT・総ビリルビン・NH3は、そんなに変化していないので、ウルソデオキシコール酸による肝機能改善は認められません。
3.「×」チクロピジン(パナルジンⓇ):血小板凝集抑制薬
検査値より、1ヶ月前と今回を比較して、血小板数は減少しているが、白血球数と赤血球数は、そんなに変化していないので、汎血球減少(血液細胞:赤血球・白血球・血小板の全てが減少)は認められません。
4.「×」ニフェジピン(アダラートⓇ):Ca拮抗薬
ニフェジピンは、肝代謝薬物(CYP3A4)なので、 CCr に基づいて減量しなくてもよい。
CCr:クレアチニン・クリアランスは、糸球体濾過量で、正常値は、100~120mL/分
(※eGFRは、糸球体濾過量(糸球体機能)を示し、CCrは糸球体濾過量(糸球体機能)+尿細管でのクレアチニン分泌量(尿細管機能)を示しています。)
5.「×」バルサルタン(ディオバンⓇ):AT1受容体ブロッカー(ARB)
横紋筋融解症では、筋肉が破壊され、ミオグロビンなどの成分が、血液中に放出されます。
赤い色素を持つミオグロビンが、血液中から尿中に排泄されると、赤褐尿となります。
CK(CPK:クレアチンホスホキナーゼ)やミオグロビンなどが上昇していたら、横紋筋融解症を疑うのですが、今回の検査値項目には無いため不明です。
問335の解答:1