第109回 薬剤師国家試験問題 問328(B型肝炎) | 積小為大!!  健康・社会保険・労働に関すること

第109回 薬剤師国家試験問題 問328(B型肝炎)

実務
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問328(実務)

65歳男性。30年前の検査でB型肝炎ウイルス(HBV)陽性であったが、

症状もなく長年未治療のまま放置していた。

最近になり、倦怠感、腹部膨満感及びめまい、ふらつきが強くなり、家族に連れられて受診したところ、非代償性肝硬変と診断を受け緊急入院となった。

検査の結果、腹水が観察され血圧も高値であり、内服薬が開始されることになった。

患者は日頃より便秘を訴えており、現在、食事は可能であるが摂取量が減ってきている。

また、血中アンモニアが 198μg/dL と高値を示している。

以下が入院後の処方である。

 

(処方1)

アムロジピン口腔内崩壊錠5mg     1回 1錠(1日1錠)

フロセミド錠40mg      1回1錠(1日1錠)

スピロノラクトン錠25mg      1回 2錠(1日2錠)

1日1回    朝食後  3日分

 

(処方2)

テノホビル アラフェナミドフマル酸塩錠25mg    1回1錠(1日1錠)

1日 1回    朝食後  3日分

 

(処方3)

ウルソデオキシコール酸錠100mg   1回2錠(1日6錠)

1日3回   朝昼夕食後  3日分

 

(処方4)

酸化マグネシウム錠330mg     1回2錠(1日6錠)

ラクツロースゼリー分包12 g/包      1回 1包(1日3包)

分岐鎖アミノ酸配合経口ゼリー剤 20 g/個     1回 1個(1日3個)

1日3回   朝昼夕食後  3日分

 

 

処方に対する薬剤師のアセスメント等として、適切なのはどれか。2つ選べ。

 

1.高血圧に対してアムロジピンでコントロールが不十分な場合には、テルミサルタンの追加を提案する。

 

2.利尿剤による過度の脱水は、肝性昏睡(肝性脳症)を誘発する可能性があるため、利尿薬の投与量に注意が必要である。

 

3.今後肝機能の改善が見られない場合には、ウルソデオキシコール酸を中止し、アセチルシステインを提案する。

 

4.テノホビルは、投与中止により肝炎の重症化を起こすことがあるため、患者に自己判断で中止しないように指導する。

 

5.分岐鎖アミノ酸製剤は非代償性肝硬変の治療に必須のため、今後食事が摂取できなくなっても継続する必要がある。

 

 

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問328の解説

1.「×」テルミサルタン(ミカルディス)は、胆汁中に排泄されるARBです。

非代償性肝硬変の患者なので、胆汁排泄型のテルミサルタンを提案するのは不適です。

※アムロジピン(アムロジン・ノルバスク):Ca拮抗薬

 

 

2.「〇」肝性脳症とは、肝臓で分解されるNH3が、肝機能の低下により分解されず、脳に影響を与え、昏睡状態となることです。

 

 

肝性脳症を予防するには、以下の方法があります。

 

①腹水や浮腫み改善のために、服用している利尿剤での脱水を防ぐ

脱水になると、血液中のNH3濃度が上昇するため、肝性脳症になりやすくなります。

※フロセミド(ラシックス):ループ利尿薬

※スピロノラクトン(アルダクトン):抗アルドステロン性利尿薬

 

②便秘予防

便秘になると、NH3を産生する腸内細菌が増えるので、酸化マグネシウム・ラクツロースで予防をします。

※酸化マグネシウム(マグミット):塩類下剤・制酸剤

※ラクツロース(モニラック):高NH3血症治療剤・腸管機能改善薬

ヒトの消化管粘膜には、ラクツロースを単糖に分解する酵素が存在しないため、下部消化管に達したラクツロースは、腸内細菌によって分解され、有機酸(乳糖・酢酸)となり、消化管のpHを低下させます。

そのため、腸管でのNH3吸収が抑制されるので、血中NH3濃度が低下します。

また、下部消化管に達した、ラクツロースは浸透圧作用により緩下作用も示します。

 

③ NH3を産生する腸内細菌を抑える。

カナマイシン(アミノグリコシド系抗生物質)を服用します。

 

④ NH3産生の原因となる、タンパク質の摂取を控える。

肝機能が低下すると、肝臓でアルブミン(タンパク質)の合成ができなくなり、腹水となります。

その場合、筋肉でアルブミンを合成するのですが、その際、BCAAが必要となります。

※分岐鎖アミノ酸(リーバクト:BCAA):非代償性肝硬変患者のアミノ酸インバランスを改善して、アルブミン合成を促し、低アルブミン血症を改善します。

 

 

3.「×」アセチルシステインは、アセトアミノフェン過量摂取時の解毒に用います。

ウルソデオキシコール酸 (ウルソ):肝・胆・消化機能改善薬

 

 

4.「〇」B型肝炎治療薬は、投与中止により、肝機能の悪化又は肝炎の重症化を起こすことがあるので、患者が自己判断で服薬を中止しないように指導します。

テノホビル アラフェナミド (ベムリディ):B型肝炎ウイルスの増殖抑制薬

生体内で、リン酸化されたテノホビルは、HBVの逆転写酵素により、ウイルスDNAに取り込まれ、HBVの複製を阻害します。

 

 

5.「×」分岐鎖アミノ酸(リーバクト)のみでは、必須アミノ酸を全て満たすことはできないので、食事摂取量が十分にも関わらず、低アルブミン血症を呈する、非代償性肝硬変患者に用います。

そのため、食事摂取量が不足している患者には、熱量およびタンパク質(アミノ酸)を含む、他の薬剤を投与します。

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