問228-229(衛生/実務)
70歳男性と60歳女性の夫婦。
2人で、打たせ湯のある温泉施設に日帰り旅行へ行ったところ、翌日夜に女性は全身倦怠感と頭痛を伴う発熱の症状を呈したが、自宅療養し、2日後に回復した。
一方、男性は旅行から帰った5日後に発熱し、呼吸困難感、湿性咳嗽と胸痛の症状が見られたため、医療機関を受診したところ、肺炎と診断され入院となった。
男性は身長165cm、体重53kg。
入院時の各種検査結果は以下のとおりである。
さらに、この男性が罹患している疾病に関して、尿中抗原検査及び喀痰の遺伝子増幅法検査を追加で施行した結果、いずれも陽性となった。
夫婦は同じ病原体に罹患し、女性はポンティアック熱であったと考えられた。
(身体所見)
体温 38.2℃、血圧 101/62mmHg、脈拍 95拍/分(整)、SpO2(ルームエアー)93%
(検査所見)
白血球 12,000/μL、赤血球 440×104/μL、Hb 14.3g/dL、
血小板 20×104/μL、AST 25IU/L、ALT 20IU/L、総ビリルビン 0.8mg/dL、
血清クレアチニン 2.0mg/dL、CRP 18.2mg/dL、
SARS-CoV2-PCR(鼻咽頭ぬぐい液)陰性、尿中肺炎球菌抗原検査陰性
問228(実務)
この男性患者に対する治療薬として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1.レボフロキサシン
2.オセルタミビル
3.アモキシシリン
4.セフジニル
5.ニルマトレルビル・リトナビル
問228の解説
設問より、打たせ湯のある温泉施設に行き、肺炎と診断されているので、レジオネラ症を疑います。レジオネラ症の治療薬としては、ニューキノロン系抗菌薬や、マクロライド系抗生物質を使用します。
1.「〇」レボフロキサシン(クラビットⓇ):ニューキノロン系抗菌薬
2.「×」オセルタミビル(タミフルⓇ):抗インフルエンザウイルス薬
3.「×」アモキシシリン(サワシリンⓇ):ペニシリン系抗生物質
4.「×」セフジニル(セフゾンⓇ):セフェム系抗生物質
5.「×」ニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッドⓇ):抗SARS-CoV-2薬
問228の解答:1
問229(衛生)
この男性患者が罹患した疾病に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.感染症法(注)において三類感染症に分類される。
2.高齢者や免疫力の低下した人がかかる日和見感染症である。
3.ビル空調機の循環冷却水や加湿器から発生するエアロゾルを吸入することで集団発生しやすい。
4.罹患者の飛沫によって、直接他者へ感染する。
5.ワクチン接種により予防することができる。
(注)感染症法:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
問229の解説
レジオネラ症には、肺炎型とポンティアック熱(非肺炎型)など様々な病型があります。
在郷軍人型(肺炎型):米国の在郷軍人集会での集団感染から名付けられ、潜伏期間が2~10日程度で、発熱・湿性咳嗽・血痰などがおこり、適切な治療が行われないと重症化することがあります。
ポンティアック熱(非肺炎型):米国のポンティアックでの集団感染から名付けられ、潜伏期間が48時間程度で、発熱・頭痛・倦怠感・筋肉痛がおこり、2~5日で自然軽快する予後のよい病型です。
1.「×」レジオネラ症は、感染症法において、四類感染症に分類されています。
2.「〇」レジオネラ症は、高齢者や免疫力の低下した人が罹患しやすい、日和見感染症です。
3.「〇」レジオネラ症は、エアロゾルを発生させる環境(空調用の冷却塔・循環式浴槽・加湿器・噴水)で集団発生がおこりやすいです。
4.「×」レジオネラ症は、ヒトからヒトへ直接感染しません。
レジオネラ菌に汚染されたエアロゾルの吸入により発症します。
5.「×」レジオネラ症に対するワクチンは、現在存在していません。
そのため、水周りの環境を清潔に保ち、レジオネラ菌の増殖を防ぐことが、感染予防となります。
問229の解答:2と3