問173(薬剤)
薬物のみかけの分布容積とその変動に関与する血漿タンパク結合に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.みかけの分布容積は、体内薬物量と血漿中薬物濃度の平衡定数として定義される。
2.特定の臓器や細胞内小器官(核やリソソーム、ミトコンドリアなど)に分布する薬物は、体重1kgあたりの分布容積が10Lを越えることがある。
3.脂溶性の高い薬物の分布容積は加齢に伴って減少する。
4.血漿タンパク結合率が高い薬物のみかけの分布容積は体内水分量とほぼ等しい。
5.タンパク非結合型薬物の濃度は、定常状態において血漿中と組織間隙液中との間でほぼ等しい。
問173の解説
1.「×」分布容積(Vd)とは、薬物が血中濃度と同じ濃度で、各組織に移行したと仮定したときの容積のことです。
みかけの分布容積とは、投与した薬物を、血中薬物濃度と同じ濃度にするために、必要な体液量のことです。(よって、みかけの分布容積(L)=体内薬物量(mg)/血中薬物濃度(mg/L))
温度や圧力を一定にしたとき、可逆的な化学反応(A + B ⇆ AB)は、みかけ上、反応が進んでいない状態になります(平衡状態)。この状態を、平衡定数(K)=[AB]/[A]×[B]と定義しています。
2.「〇」分布容積の定義より、血中薬物濃度が低く、特定の臓器(組織)に多く分布する薬物は、分布容積が多くなります。
3.「×」加齢に伴い、水分量が減少するため、脂溶性の高い薬物の分布容積は、増えます。
4.「×」薬物の血漿タンパク非結合率をfp、薬物の組織タンパク非結合率をft、血漿容積をVp、組織容積をVtとすると、分布容積(Vd)=Vp + Vt ×fp/ftと表せます。
血漿タンパク結合率が高い薬物は、Vd≒Vpとなるので、血漿容積とほぼ等しくなります。
5.「〇」定常状態においては、タンパク非結合型薬物の濃度(Df)は、血漿中と組織間隙液中との間でほぼ等しくなります。
問173の解答:2と5