問161(薬理)
造血系に作用する薬物に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.エルトロンボパグは、赤芽球系前駆細胞のエリスロポエチン受容体を刺激することで、赤血球の産生を促進する。
2.メコバラミンは、赤芽球内のヘム合成酵素の補酵素として作用することで、ヘムの合成を促進する。
3.ダプロデュスタットは、低酸素誘導因子(HIF)プロリン水酸化酵素を阻害することで、HIFの分解を抑制してエリスロポエチンの産生を促進する。
4.フィルグラスチムは、単球系前駆細胞から単球への分化を促進することで、単球からの顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の放出を増加させる。
5. 葉酸は、体内でテトラヒドロ葉酸に代謝されて、DNA合成の補酵素として作用し、赤血球の成熟を促進する。
問161の解説
1.「×」エルトロンボパグ(レボレードⓇ)は、トロンボポエチン受容体に作用して、巨核球の増殖・分化を促進させ、血小板増加作用を示します。また、骨髄前駆細胞の増殖・分化を促進させ、血球増加作用も示すので、再生不良性貧血の治療にも用いられます。(※エリスロポエチンは、赤芽球系前駆細胞に作用して赤血球への分化を促します)
2.「×」メコバラミン(メチコバールⓇ)は、ビタミンB12製剤で、核酸合成に関与するほか、ヘム合成の前段階に関与します。
赤芽球内のヘム合成酵素の補酵素として作用することで、ヘムの合成を促進するのは、ビタミンB6製剤です。
3.「〇」HIF(低酸素誘導因子)は、細胞が低酸素状態になると活性化されるタンパク質(転写因子)です。通常の酸素状態では、HIF-PH(HIF-プロリン水酸化酵素)によって分解されるため、活性化することはありませんが、高地などの酸素が薄い場所や、貧血などで細胞が低酸素状態になった場合に、活性化されます。
この生体内機構を応用した、ダプロデュスタット(ダーブロックⓇ)は、HIF-PH阻害薬なので、HIFが活性化されます。HIFが活性化されると、腎臓でのエリスロポエチン産生が増加し、赤血球の分化・成熟が促進するので、腎性貧血に用いられます。
4.「×」フィルグラスチム(グランⓇ)は、G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)製剤で、好中球前駆細胞に発現するG-CSF受容体と結合して、好中球前駆細胞から好中球への分化を誘導します。
5.「〇」葉酸(フォリアミンⓇ)は、生体内でテトラヒドロ葉酸に代謝されて、DNA合成の補酵素として作用し、赤血球の成熟を促進させます。
問161の解答:3と5