第108回 薬剤師国家試験問題 問326(タクロリムス・エベロリムス) | 積小為大!!  健康・社会保険・労働に関すること

第108回 薬剤師国家試験問題 問326(タクロリムス・エベロリムス)

実務
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36歳男性。身長172cm、体重61 kg。

アルコール性肝硬変による末期肝不全に対して、妻をドナーとして生体肝移植術が施行された。

術後4週間で退院し、退院2週間後、1回目の診察において、退院時処方は処方1に変更されるとともに処方2も追加された。

退院6週間後3回目となる今回の診察において、タクロリムス及びエベロリムスの血中濃度が前回に比べて上昇していた。

退院当日から今回までの検査値等の推移と患者からの今回の聞き取り内容を示す。

 

 

(退院時処方)

タクロリムス徐放性カプセル5mg

1回 1カプセル(1日1カプセル)

プレドニゾロン錠1 mg

1回 2錠(1日 2錠)

ST 配合錠(注)

1回 1錠(1日1錠)

1日1回 朝食後14日分

 

 

(処方1)

タクロリムス徐放性カプセル1 mg

1回 3カプセル(1日3カプセル)

プレドニゾロン錠1 mg

1回 1錠(1日1錠)

ST 配合錠(注)

1回 1錠(1日1錠)

1日 1回 朝食後14日分

 

 

(処方2)

エベロリムス錠0.5 mg

1回 2錠(1日4錠)

1日 2回 朝夕食後14日分

 

(注)1錠中にスルファメトキサゾール 400mg、トリメトプリム80 mg を含有する。

 

 

(退院当日以後の検査値等)

退院当日

退院後の受診タイミング

2週後 4週後 6週後
血中薬物濃度
タクロリムス(ng/mL) 8.6 8.1 5.2 13.4
エベロリムス(ng/mL) 4.6 11.0
一般検査等
AST(IU/L) 62 35 31 33
ALT(IU/L) 81 52 33 27
総ビリルビン(mg/dL) 1.5 1.2 1.1 1.0
血清クレアチニン(mg/dL) 0.90 0.92 0.85 1.01
eGFR(mL/min/1.73m2 77.8 76.0 82.9 68.6

 

 

(患者からの聞き取り内容)

・アドヒアランス良好、診察日に限り採血後に服用、禁酒は継続中

・ 2日前より足のむくみ、昨日夕方より口内炎を自覚

・ 3日前にスウィーティーを摂取

 

 

 

 

以上の経過から、薬剤師のアセスメントとして誤っているのはどれか。1つ選べ。

 

1.口内炎は、エベロリムスの副作用である。

 

2.スウィーティーを食べたことにより、エベロリムスの血中濃度が上昇した。

 

3.エベロリムスの併用によりタクロリムスの血中濃度が上昇した。

 

4.足のむくみは、タクロリムスの副作用である。

 

5.ST配合錠の継続はエベロリムスの血中濃度の上昇と無関係である。

 

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問326の解説

タクロリムス(プログラフ)・エベロリムス(サーティカン)の作用機序

タクロリムス・エベロリムスの免疫抑制作用機序

 

FKBP12に、タクロリムスとエベロリムスは、競合的に結合するのでin vitroでは、相互作用を認める。

しかし、臨床の薬用量では、相互作用は顕在化しないので、エベロリムス(サーティカン)を使用する際は、タクロリムスの減量と副作用を減らすために、カルシニューリン阻害薬(タクロリムス)と副腎皮質ホルモン薬(プレドニゾロン)を併用することになっています。

 

 

1.「〇」エベロリムス(サーティカン):mTOR阻害剤(免疫抑制薬)

mTOR阻害薬の特徴的な副作用に口内炎があります。

 

 

2.「〇」スウィーティー:柑橘類の1種。グレープフルーツとブンタンの交配種。

スウィーティーが柑橘類と推測できたら、正解しやすいと思いますが、馴染みがないので難しい。

スウィーティーにより、小腸の薬物代謝酵素CYP3A4が阻害され、エベロリムスの血中濃度が上昇。(※エベロリムス・タクロリムスは、CYP3A4により代謝されます)

 

 

3.「×」設問より、退院後2週間目にエベロリムスとタクロリムスが併用開始となり、退院後4週間目では、タクロリムスの血中濃度は下がっている。しかし、退院後6週間目の血液検査で、タクロリムスの血中濃度が上昇したのは、3日前にスウィーティーを摂取したことによるものだと推測できる。

 

 

4.「〇」タクロリムスの副作用に、浮腫み・腎不全・心不全などがあります。

カリウム保持性利尿薬を服用中の患者には、高カリウム血症が起こることがあるので、タクロリムスは使用できません。

 

 

5.「〇」ST配合錠(バクタ:スルファメトキサゾール・トリメトプリム):合成抗菌薬

スルファメトキサゾールは微生物内で葉酸の生合成を阻害、トリメトプリムは葉酸の活性化を阻害して抗菌作用を示します。問3と同じ理由で、ST配合錠の継続とエベロリムスの血中濃度の上昇は、無関係。

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