63歳男性。数日前より全身倦怠感があり、血圧低下、体重減少が出現したため近医を受診し、大学病院を紹介された。外観上皮膚の色素沈着が認められた。
検査の結果、コルチゾールの低値及びACTHの高値が認められ、アジソン病の確定診断を受け、以下の処方が開始となった。
(入院時検査値)
身長165cm、体重53kg、血圧99/59mmHg、
Na 134mEq/L、K 5.3mEq/L、空腹時血糖75mg/dL、
コルチゾール 1.0μg/dL、ACTH 1,796pg/mL
(処方)
ヒドロコルチゾン錠10mg 朝1.5錠、昼0.5錠(1日2錠)
1日2回 朝昼食後 7日分
しかし、投薬開始後、低血圧及び低Na血症の改善が不十分であり、処方に追加する治療薬の検討が必要となった。この患者に追加する最も適切な治療薬はどれか。1つ選べ。
1.デキサメタゾン
2.ベタメタゾン
3.フルドロコルチゾン
4.スピロノラクトン
5.エプレレノン
問335の解説
アジソン病は、後天性の原発性副腎皮質機能低下症のため、副腎皮質ホルモンの分泌が低下し、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の産生が増加します
副腎は、3層構造をしており、球状層からアルドステロン(ミネラルコルチコイド)、束状層からグルココルチコイド、網状層からアンドロゲンが分泌されます
設問の患者は、低血圧の改善が不十分(Na不足)、K 5.3mEq/L(高め)とあるので、副腎皮質ホルモンの中でも、アルドステロンの作用がある薬を追加した方がよいと考えます
ヒドロコルチゾン(コートリルⓇ):副腎皮質ホルモン
グルココルチコイド作用があり、ミネラルコルチコイド作用は、弱い
1.「×」デキサメタゾン(デカドロンⓇ):副腎皮質ホルモン
グルココルチコイド作用はあるが、ミネラルコルチコイド作用は、ほぼ無い
2.「×」ベタメタゾン(リンデロンⓇ):副腎皮質ホルモン
グルココルチコイド作用はあるが、ミネラルコルチコイド作用は、ほぼ無い
3.「〇」フルドロコルチゾン(フロリネフⓇ):鉱質コルチコイド
4.「×」スピロノラクトン(アルダクトンⓇ):ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
アジソン病では、副腎皮質機能が低下しているため、アルドステロンの分泌が低下しています
スピロノラクトンの抗アルドステロン作用により、さらにアルドステロンの機能が低下し、K値が上昇することが考えられるため禁忌
5.「×」エプレレノン(セララⓇ):ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
問335の解答:3
