問234-235(衛生/実務)
55歳男性。身長165cm、体重46kg。
脳血管障害により3年前から寝たきりの状態となり自宅療養中であった。
ベッドから誤って転落し、大腿骨を骨折したため、入院となった。
入院時、仙骨部に褥瘡が認められ、病態としては黄色期と判断されたことから、褥瘡チームが介入した。
褥瘡チームが回診で確認したところ滲出液、創周囲の感染徴候が認められた。
問234(実務)
褥瘡チームの薬剤師による医師への提案として適切なのはどれか。2つ選べ。
1.急性期の病態と考えられることから、積極的な薬物治療は行わず、経過観察する。
2.抗菌薬を全身投与する。
3.スルファジアジン銀クリームを患部に塗布する。
4.精製白糖・ポビドンヨード配合軟膏を患部に塗布する。
5.クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏を患部に塗布する。
問234の解説
1.「×」黄色期なので、治療を行います。
2.「×」仙骨部の褥瘡だけなら、抗菌薬を全身投与する必要はないと考えます。
3.「〇」黄色期で滲出液があり、創周囲の感染徴候が認められたと設問にあります。スルファジアジン銀(ゲーベンⓇ)は、細菌の細胞膜や細胞壁に作用して抗菌作用を示すので、医師に提案するのに適しています。
4.「〇」感染徴候が認められたとあるので、精製白糖・ポビドンヨード(ユーパスタⓇ)に含まれる、・ポビドンヨードによる殺菌作用、白糖の局所浸透圧上昇による創傷治癒作用を期待して医師に提案します。
5.「×」クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベートⓇ)は、ステロイド剤なので、感染症を悪化させるおそれがあるため、不適とします。
褥瘡治療薬の使い分け
問234の解答:3と4
問235(衛生)
褥瘡治療においては、必要なエネルギー量と摂取タンパク質量を考慮することが重要であるため、NST(Nutrition Support Team)の薬剤師が介入することとなった。
この患者に必要な栄養投与量は、総エネルギー量が体重1kgあたり30kcal、タンパク質摂取量が1日あたり60gである。
この場合の非タンパク質カロリー/窒素比(NPC/N比)として最も近いのはどれか。1つ選べ。
ただし、タンパク質の窒素含有率は16%とする。
①100
②120
③140
④160
⑤180
問235の解説
1.「×」
2.「〇」1日あたりの総エネルギー量は、30kcal×46kg=1380kcal/day
タンパク質のAtwater係数は、4kcal/gなので、1日あたりのタンパク質摂取によるカロリーは、60g×4kcal/g=240kcal/day
よって、1日あたりの非タンパク質カロリーは、1380kcal/day ー 240kcal/day=1140kcal/day
タンパク質の窒素含有率が16%とあるので、1日あたりのタンパク質摂取量である60gに含まれる窒素量は、60g×16%=9.6g/day
タンパク質は、非タンパク質カロリーである炭水化物や脂質からのエネルギーが十分でないと、タンパク合成に利用されにくいため、NPC/N比を求めています。(NPC/N比は、褥瘡なら100、通常150、腎不全なら200を目安とします)
非タンパク質カロリー(kcal)/窒素(g)=NPC/N=1140(kcal/day)/9.6(g/day)=118.75
3.「×」
4.「×」
5.「×」
問235の解答:2