第109回 薬剤師国家試験問題 問270-271(ボリコナゾール) | 積小為大!!  健康・社会保険・労働に関すること

第109回 薬剤師国家試験問題 問270-271(ボリコナゾール)

薬剤・実務
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73歳男性。体重60kg。

慢性気管支炎のため、長期治療(エンクラッセ62.5μgエリプタ30吸入用(注)、1日1回1吸入)を実施中である。

咳嗽症状が悪化し、39℃以上の発熱、茶色の喀痰症状があり、肺炎疑いのため、入院加療となった。

 

最近では肺炎を繰り返しており、精査を行ったところ、末梢血好酸球増加、アスペルギルスの抗体検査及び喀痰検査陽性、レントゲン画像所見などから、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症と診断され、ボリコナゾール200mg静注用を投与することとなった。

投与量は、ボリコナゾールとして初日は1回6mg/kgを1日2回、2日目以降は1回3mg/kgを1日2回とした。

 

投与開始から4日目と8日目に血中濃度を測定した。

測定結果がわかるまでに数日を要することから、病棟カンファレンスにおいて、薬物治療に関する確認事項を共有した。

(注) 1吸入でウメクリジニウムとして62.5μgを吸入できるドライパウダー吸入剤

問270(実務)

ボリコナゾールのTDM結果の解析に向けて、薬物の体内動態と血中濃度の個人差について共有しておくべき情報として、正しいのはどれか。2つ選べ。

 

1.トラフ値が目標値を超える場合は、肝機能障害に注意する。

 

2.ウメクリジニウムにより代謝酵素の阻害を受けるため、併用には注意が必要である。

 

3.主となる代謝酵素は、日本人の人口の約50%がpoor metabolizerである。

 

4.中等度の腎機能低下時には、注射剤中の添加剤の蓄積による腎機能悪化に注意が必要である。

 

5.2日目以降に同じ投与量を繰り返した場合、代謝酵素の誘導を起こして血中濃度は上昇する。

 

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問270の解説

ボリコナゾール(ブイフェンド):真菌細胞の膜成分であるエルゴステロールの生合成を阻害し、抗真菌作用を示します。

 

ウメクリジニウム(エンクラッセ):ムスカリン受容体遮断薬で、気管支平滑筋の収縮を抑制し、慢性閉塞性肺疾患の症状を緩和します。

 

 

1.「〇」ボリコナゾールの副作用として、重篤な肝障害があり、トラフ値が目標値(4.5μg/mL)を超える場合、肝機能障害のリスクが高まります。

 

 

2.「×」ボリコナゾールは、CYP2C19・2C9・3A4で代謝されます。また阻害作用も有します。

ウメクリジニウムは、CYP2D6で代謝されます。

 

 

3.「×」ボリコナゾールの主となる代謝酵素である、CYP2C19の日本人のPMの割合は、約20%です。

 

 

4.「〇」ボリコナゾールの注射剤には、添加剤として、スルホブチルエーテル β-シクロデキストリンNa(SBECD)が添加されています。

SBECDは、腎排泄されるため、腎機能が低下していると蓄積し、腎機能を悪化させることがあります。

 

 

5.「×」ボリコナゾールは、CYP2C19・2C9・3A4の阻害作用を有します。

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問271(薬剤)

点滴投与から9日後、平熱に戻り、呼吸状態も改善されたため退院が決定し、点滴静注からボリコナゾール錠150mgを1回1錠、1日2回の内用剤に切り換えることになった。

定常状態に到達後の血中濃度を測定したところ、ボリコナゾールの平均血中濃度は4μg/mLであった。

臨床試験の結果から、ボリコナゾールの体内からの消失はミカエリス・メンテン式に従うこと、最大消失速度はボリコナゾールの主な代謝酵素のextensive metabolizer(EM)では35mg/hであること、ミカエリス定数は遺伝子多型の影響を受けず4mg/Lであることが示されている。

この患者の最大消失速度はEMの何倍か。

最も近い値を1つ選べ。

ただし、ボリコナゾールの経口投与後のバイオアベイラビリティは100%とする。

 

①0.2

 

②0.4

 

③0.7

 

④0.9

 

⑤1.4

 

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問271の解説

1.「×」

 

 

2.「×」

 

 

3.「〇」ミカエリス・メンテン式は、v:消失速度、Vmax:最大消失速度、C:血中薬物濃度、Km:ミカエリス定数とすると、v=Vmax・C / Km+Cと示せます。

 

定常状態では、投与速度と消失速度が等しいので、投与速度をkとすると、k=v=Vmax・C /Km+C ⇔ Vmax=k・(Km+C)/Cとなります。

 

設問より、k(投与速度):150mgを1回1錠・1日2回より、300mg/day

Km(ミカエリス定数):4mg/L

C(血中薬物濃度):定常状態の平均血中薬物濃度は、4μg/mLなので、

 

Vmax=300mg/day・(4mg/L+4μg/mL)/ 4μg/mL

= 300mg/day・(4mg/L+4mg/L)/ 4mg/L

=300mg/day ・ 8mg/L / 4mg/L

=600mg/day

 

設問より、EMのVmaxは、35mg/hrより、840mg/day

600mg/day / 840mg/day = 0.75

 

 

4.「×」

 

 

5.「×」

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