問206-207
70歳男性。1ヶ月前より両手の関節の痛みと腫れが出現し、家族とともに病院の整形外科を受診し、医師より精密検査のための入院を勧められた。
検査の結果、軽度の関節リウマチとの診断を受けた。
メトトレキサートによる治療を開始したが、肝機能障害が出現し、以下の処方へ変更となった。
(処方1)
ブシラミン錠100mg 1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 7日分
2週間後、薬剤師が服薬指導で患者の病室を訪問したところ、「食事が美味しくない、味があまりしない。」との訴えがあり、食事の摂取量も減少していることが分かった。
薬剤師はブシラミン錠による薬剤性味覚異常の可能性を考え、医師へ血清亜鉛濃度の測定を依頼した。
臨床検査値:血清亜鉛 65μg/dL(基準値:80~130μg/dL)
医師は臨床検査値の結果を踏まえ、以下の処方を追加した。
(処方2)
酢酸亜鉛水和物錠25mg 1回1錠(1日2錠)
1日2回 朝夕食後 7日分
問206(実務)
今後の薬剤師の対応として適切でないのはどれか。1つ選べ。
1.味覚異常の原因薬剤と考えられるブシラミン錠の継続の可否について医師に確認する。
2.味覚障害には口内炎や口腔内乾燥を伴うこともあるため、これらの症状について患者に確認する。
3.亜鉛濃度が過剰にならないように、定期的な血清亜鉛濃度の測定を医師に依頼する。
4.患者に対して、処方2に加えて亜鉛サプリメントを摂取する場合には、医師あるいは薬剤師に相談するように指導する。
5.亜鉛の補充により銅の吸収が増強され銅過剰症を起こすおそれがあると医師に情報提供を行う。
問206の解説
1.「〇」ブシラミン(リマチルⓇ):抗リウマチ薬
問207より、ブシラミン(リマチルⓇ)は、構造中に2個のSH基を持ち、金属(亜鉛)イオンとキレートを形成するため、血清の亜鉛が基準値より低下し、味覚異常となったと考えられます。
2.「〇」味覚障害には、口内炎・口腔内乾燥(ドライマウス)・舌痛を伴うことがあります。
3.「〇」酢酸亜鉛(ノベルジンⓇ):低亜鉛血症治療薬・ウィルソン病治療薬(銅吸収阻害剤)
ノベルジンⓇは亜鉛として働き、亜鉛が腸管に達すると、メタロチオネインとなり銅イオンとキレートを作り、銅の吸収を阻害します。
4.「〇」亜鉛の過剰症では、吐き気・嘔吐・下痢が見られることがあります。
また、亜鉛の過剰状態が続くと、 銅の吸収が低下し、 貧血を生じることがあります。
5.「×」亜鉛と銅は、吸収を阻害し合うミネラルです。
亜鉛が腸管に達すると、メタロチオネインとなり銅イオンとキレートを作り、銅の吸収を阻害します。
問206の解答:5
問207(化学)
この患者の味覚異常に最も関連するブシラミンの性質はどれか。1つ選べ。
1.酸化剤として働く。
2.水に溶けにくい。
3.弱酸性を示す。
4.キレート作用をもつ。
5.分子内ジスルフィド結合を形成する。
問206の解説を参照
1.「×」
2.「×」
3.「×」
4.「〇」
5.「×」