第110回 薬剤師国家試験問題 問302-303(肺癌) | 積小為大!!  健康・社会保険・労働に関すること

第110回 薬剤師国家試験問題 問302-303(肺癌)

病態・実務
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75歳男性。慢性胃炎の既往がある。

2年前に脳梗塞を発症し、それ以来、処方1及び処方2の薬剤を継続的に服用している。

 

(処方1)

ワルファリンカリウム錠1mg    1回1錠(1日1錠)

1日1回    朝食後   28日分

 

(処方2)

レバミピド錠100mg   1回1錠(1日3錠)

1日3回    朝昼夕食後   28日分

 

咳と嗄声が続き、血痰を認めたため近医を受診し、胸部X線で右肺腫瘤を指摘された。

総合病院呼吸器内科を紹介受診し、入院して精査した結果、StageⅣBの非小細胞肺がん(腺がん)と診断された。

遺伝子検査も実施され、EGFR遺伝子変異陽性と判明した。パフォーマンスステータス(PS)1。

 

患者に喫煙歴はなく、機会飲酒のみ。

外来通院治療を強く希望したため、ゲフィチニブ(処方3)での治療を開始することになり、処方1、処方2とも総合病院で一括して処方することになった。

 

(処方3)

ゲフィチニブ錠250mg   1回1錠(1日1錠)

1日1回  朝食後  14日分

状態が安定したら退院し、処方1~3の薬剤での治療を継続する予定である。

問302(病態・薬物治療)

この患者の病態と治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

 

1.肺野部に発生することが多いがんである。

 

2.発症前と同じ日常生活が制限なく行える。

 

3.他臓器に遠隔転移している。

 

4.手術での根治切除が可能である。

 

5.腫瘍マーカーとして、SCC抗原(squamous cell carcinoma related antigen)が用いられる。

 

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問302の解説

1.「〇」

  組織型 好発部位
非小細胞肺癌 腺がん 肺野部(肺の末梢・奥)
扁平上皮癌 肺門部(肺の入り口近く)

喫煙と関連が深い

大細胞がん 肺野部(肺の末梢・奥)
小細胞肺癌 小細胞がん 肺門部(肺の入り口近く)

喫煙と関連が深い

 

 

2.「×」設問より、パフォーマンスステータス(PS)1とある。

パフォーマンスステータス

0 発症前と同じ、日常生活が制限なく行える
1 肉体的に激しい活動は制限されるが、軽作業は行うことができる
2 自分で身の周りのことは、すべて可能だが、作業はできない
3 限られた、自分の身の周りのことしかできない
4 全く動けない。自分の身の周りのことが、できない。

 

 

3.「〇」設問より、StageⅣBとあるので、他臓器に遠隔転移しています。

 

 

4.「×」設問より、StageⅣBとあるので、遠隔転移があるため、手術での根治切除は不可能です。

そのため、薬物療法(分子標的薬や免疫療法)などを行います。

 

 

5.「×」腫瘍マーカーとして特異性が高いのは、

SCC抗原:扁平上皮癌

CEA:腺がん

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問303(実務)

処方3の開始にあたり、病棟薬剤師の対応として、適切なのはどれか。2つ選べ。

 

1.ゲフィチニブによる手足症候群を予防するため、レボフロキサシンの追加を医師に提案する。

 

2.レバミピドをオメプラゾールに変更するよう医師に処方提案する。

 

3.プロトロンビン時間が延長する可能性があるので、ワルファリンカリウムの用量調節を医師に提案する。

 

4.退院後の服薬時に息切れ、呼吸困難、発熱などの症状が現れたらすぐに受診するよう、患者に説明する。

 

5.ゲフィチニブの効果を減弱させる可能性があるため、グレープフルーツジュースの摂取を避けるよう患者に説明する。

 

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問303の解説

ゲフィチニブ(イレッサ):上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬

 

1.「×」手足症候群:手や足の皮膚・爪の細胞が障害されること

レボフロキサシン(クラビット):ニューキノロン系抗生物質

 

 

2.「×」レバミピド(ムコスタ):胃粘膜保護薬

オメプラゾール(オメプラゾン・オメプラール):プロトンポンプ阻害薬

ゲフィチニブ(イレッサ)は、塩基性薬物のため、胃内pHが上昇すると、溶解性が低下するので、吸収が低下する可能性があります。

 

 

3.「〇」ワルファリン(ワーファリン):抗凝固薬

ゲフィチニブ(イレッサ)とワルファリン(ワーファリン)を併用すると、ワルファリンの作用が増強し、プロトロンビン時間が延長する可能性があります。

 

 

4.「〇」ゲフィチニブ(イレッサ)の重大な副作用に間質性肺炎があるため、間質性肺炎の初期症状(息切れ・咳・呼吸困難・発熱など)の症状が現れたら、直ぐに受診するよう、患者に説明します。

 

 

5.「×」ゲフィチニブ(イレッサ)の代謝には、CYP3A4が関与しているため、CYP3A4を阻害する薬剤(アゾール系抗真菌薬・マクロライド系抗生剤・ジルチアゼムなど)やグレープフルーツジュースと併用すると、血中濃度が上昇する可能性があります。

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