問222・223(実務/生物)
68歳男性。パーキンソン病及びうつ病の治療のため継続して薬剤を服用し、パーキンソン病の症状は軽快していたが、1ケ月前より時間帯によって歩くことができたりできなかったりする症状が認められ、生活に支障をきたすようになった。
薬の調節とリハビリテーションを行う目的で4週間の入院となった。
(入院時持参薬)
レボドパ100mg・カルビドパ配合錠
ペルゴリドメシル酸塩錠250μg
パロキセチン錠20mg
問222(生物)
下図に示すように、レボドパは、末梢で酵素Aが触媒する反応によってドパミンに、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)によるメチル化によって代謝物Bに変換される。
以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
110-222
1.レボドパは、ラセミ体である。
2.酵素Aによる反応は、アミノ基転移反応である。
3.酵素Aによる反応は、ビタミンB6に由来する補酵素によって促進される。
4.レボドパよりもドパミンの方が、脳内へ移行しやすい。
5.代謝物Bは、レボドパ分子内のヒドロキシ基がメチル化されたものである。
問222の解説
1.「×」生物で使用されるアミノ酸は、L型。
L型のチロシンに、チロシン水酸化酵素が働くと、L型のレボドパ(L-ドパ)となります。
2.「×」レボドパ(L-ドパ)に酵素A(芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素)が働くと、ドパミンとなります。
3.「〇」ビタミンB6は、脱炭酸酵素反応を触媒します。
4.「×」ドパミンは、血液脳関門(BBB)を通過しづらい。
レボドパ(L-ドパ)は、アミノ酸輸送体により脳内へ移行し、酵素A(芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素)により、ドパミンに変換されます。
5.「〇」レボドパにCOMT(カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ)が働くと、3-O-methyldopa(3-OMD)となります。
問222の解答:3と5
問223(実務)
入院後、レボドパ・カルビドパ配合錠を1回1錠、1日3回から1回1錠、1日5回に増量したが、症状が改善しなかったため、さらに薬剤を追加することとなった。
この患者に追加する薬剤の候補として適切なのはどれか。2つ選べ。
1.イストラデフィリン錠
2.エンタカポン錠
3.セレギリン塩酸塩錠
4.サフィナミドメシル酸塩錠
5.ラサギリンメシル酸塩錠
問223の解説
レボドパ・カルビドパ配合錠(ドパコールⓇ):レボドパ製剤
カルビドパは、脱炭酸酵素阻害薬で、脳内に移行しないため、レボドパと一緒に投与すると、脳以外で、レボドパ→ドパミンへの変換を防ぐため、レボドパの脳への移行を高めます。
ペルゴリド(ペルマックスⓇ):ドパミンD1・D2作動性パーキンソン病治療薬
パロキセチン(パキシルⓇ):セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
1.「〇」イストラデフィリン(ノウリアストⓇ):アデノシンA2A受容体遮断薬
アデノシン(神経伝達物質)は、GABA神経を刺激するため、運動機能が抑制されます。
レボドパ製剤を長期間使用することにより、レボドパ製剤の効き目が弱くなった状態(ウェアリングオフ現象)が改善されます。
2.「〇」エンタカポン(コムタンⓇ):末梢COMT阻害薬
レボドパ製剤と併用することにより、末梢でのレボドパ代謝が阻害されるため、レボドパの脳内移行量を増やすことができます。
3.「×」セレギリン(エフピーⓇ):MAO-B阻害薬(=ドパミンの分解を阻害)
設問の患者は、SSRIを服用しているため、MAO-B阻害薬を併用すると、セロトニン症候群が起こる可能性があるため、併用禁忌
4.「×」サフィナミド(エクフィナⓇ):MAO-B阻害薬(=ドパミンの分解を阻害)
設問の患者は、SSRIを服用しているため、MAO-B阻害薬を併用すると、セロトニン症候群が起こる可能性があるため、併用禁忌
5.「×」ラサギリン(アジレクトⓇ):MAO-B阻害薬(=ドパミンの分解を阻害)
設問の患者は、SSRIを服用しているため、MAO-B阻害薬を併用すると、セロトニン症候群が起こる可能性があるため、併用禁忌
問223の解答:1と2